森本町

森本町（もりもとまち）

かつて石川県河北郡に属していた森本町は、現在の金沢市北部にあたる地域です。日本海側の河北潟に面した平野部と、東の富山県境に近い山間部からなる、多様な地形を持つ町でした。

地理

地理的には、西側は河北潟に沿った肥沃な平野が広がり、主に稲作などの農業が営まれていました。一方、東側は森下川の流れる谷間を中心とした山地となっており、権殿山といった山や、内山峠、高窪峠などの峠があります。この山間部は富山県との県境に接しています。

明治時代末期から大正時代にかけて、現在のJR森本駅が開業すると、その駅を中心に市街地が形成され、町の中心として発展を遂げました。現在のこの地域には、北陸自動車道が東西に横断しており、金沢森本インターチェンジが設置されています。不動寺パーキングエリアから富山県境へと向かう高窪トンネルにかけての区間が、かつての森本町の範囲とほぼ重なります。このように、古くからの地形に加え、近代以降の交通網の整備が地域の姿を大きく変えています。

歴史

森本町は、比較的新しい自治体として、周辺の村々が合併して誕生しました。具体的には、1954年（昭和29年）6月1日に、大場村、八田村、花園村、三谷村、そして森本村という五つの村が合併し、新たに森本町として発足しました。この合併と同時に、地域内の大字名にも一部変更があり、例えば大字弥勒縄手は大字弥勒と改称されました。

合併後も行政区域の微調整は続き、同年10月1日には、大字浅谷の一部区域が隣接する津幡町に編入されています。さらに同年12月には、大字向山の一部が大字朝日の区域に組み込まれるといった変更がありました。

森本町の自治体としての歴史は短く、1962年（昭和37年）6月1日には、金沢市に編入され、その役割を終えました。金沢市への編入に際しては、旧森本町の大部分を占める63の大字はそのまま金沢市の町名として引き継がれましたが、八つの大字については、金沢市内に同名または類似の町名が存在したため、混乱を避ける目的で名称が変更されました。主な変更は以下の通りです。

南森下 → 南森本町
北森下 → 北森本町
涌波 → 上涌波町 （金沢市内に涌波町が存在したため）
正部谷 → 正部町
鳴瀬 → 鳴瀬元町 （金沢市内に同音の成瀬町が存在したため）
八幡 → 花園八幡町 （金沢市内に八幡町が存在したため）
朝日 → 加賀朝日町 （金沢市内に同音の旭町が存在したため）
浅野 → 浅丘町 （金沢市内に浅野町が存在したため）

これらの変更は、地域の連続性を保ちつつ、新しい行政区画への円滑な移行を図るための措置でした。

文化・観光

町域には、かつて地域住民の娯楽施設として森本会館という映画館が存在しました。また、古くから温泉に恵まれた地域でもあり、森本温泉、葵温泉、深谷温泉、薬師が丘温泉といった複数の温泉地があり、湯治場や観光地として多くの人々が訪れました。これらの温泉は現在も地域の重要な資源となっています。

現在の森本地区

自治体としては消滅しましたが、「森本」という名称は現在も金沢市の地域名として定着しており、交通の要衝として、また豊かな自然と歴史を持つ地域として、その特色を保っています。

もう一度検索