森林ネネツ語

森林ネネツ語

森林ネネツ語は、ロシア北部の森林地帯、主にアガン川、プル川、リアミン川、ナディム川流域に居住するネネツ人によって話される言語です。ウラル語族に属するサモエード諸語の一つであり、ツンドラネネツ語に最も近い関係にあります。しかし、両言語間の相互理解可能性は低く、それぞれ独立した言語として扱われることが一般的です。その他、ガナサン語、エネツ語、セリクプ語などが近縁の言語として挙げられます。

音韻論

森林ネネツ語の音韻体系は、母音と子音において特徴的な構造を持っています。

母音

強勢のある音節では、以下の母音音素が区別されます。

/i/
/e/
/æː/
/ɑː/
/ə/
/o/
/u/

一方、強勢のない音節では、母音の長さの区別がなくなり、/æ ɑ ə i u/の5つの母音のみが区別されます。語の強勢は語根の位置に固定されないため、強勢のある中央母音と強勢のない高母音の交換が起こることがあります。単音節語では短母音のみが用いられますが、全体的には長母音の方が短母音よりもやや多く用いられる傾向があります。

短中央母音の/e o/は特に使用頻度が低く、いくつかの単音節語でのみ見られ、対応する高母音の/i u/と融合する傾向があります。短高母音の/i u/は、/ə/の直前では/e o/まで低下することがあり、複雑な様相を呈しています。Salminen (2007)は、長母音が基本であり、短母音は特殊な現象であると指摘しています。

/æː/およびそれに対応する非強勢母音は、非口蓋音節でのみ用いられ、[ae]または[aɛ]の二重母音と見なされることがあります。短母音/æ/は通常[aj]（айと表記）として発音されますが、これは/ɑj/の連続を表す場合もあります。他の短母音と同様に、対応する長母音と入れ替わることがあります。

一部の西部方言では、/æ/を欠き、代わりに/e/が用いられています。

子音

森林ネネツ語は24の子音音素を持ちます。清音と濁音の区別はありませんが、ほとんどの子音は口蓋化音を区別します。

口唇音: /p/, /pʲ/, /m/, /mʲ/
歯音: /t/, /tʲ/, /s/, /sʲ/, /n/, /nʲ/
歯茎音: /ɬ/, /ɬʲ/
硬口蓋音: /c/, /ɟ/
軟口蓋音: /k/, /kʲ/, /ŋ/, /ŋʲ/
口蓋垂音: /q/, /qʲ/
声門音: /ʔ/
* その他: /j/, /w/

/r/の音は、比較的新しい借用語にのみ現れます。かつての/r/, /rʲ/は、最近では側面摩擦音の/ɬ/, /ɬʲ/に変化しています。

口蓋化した歯茎音の/tʲ/, /sʲ/は、典型的には歯茎硬口蓋音の[tɕ], [ɕ]として認識されます。

正書法

ネネツ語は、キリル文字をベースにした文字体系を使用します。キリル文字に加えて、Ӈ, ʼ, ˮなどの特殊文字が用いられます。これらの文字は、ネネツ語特有の音素を表すために使用されます。

もう一度検索