森清 (子爵)

森 清

森 清（もり きよし）は、1875年（明治8年）12月30日に生を受け、1928年（昭和13年）1月3日に没した、明治から大正期にかけて日本の政界で活動した華族であり政治家です。彼は、清国駐在全権公使や文部大臣などを歴任し、日本の教育改革に大きな足跡を残した高名な文部官僚、森有礼（ありのり）の長男として誕生しました。

父である有礼は、開明的で進取の精神に富んだ人物として知られており、その薫陶のもと、清氏もまた若々しく活気に満ちた日々を過ごしたと伝えられています。しかし、清氏がまだ少年期であった明治22年（1889年）1月、父有礼が突然の不幸に見舞われこの世を去ると、清氏はその年の4月4日、わずか13歳という若さで森家の家督を相続し、父が有していた子爵位を襲爵するという重責を担うこととなりました。この若年での爵位継承は、その後の彼の人生における様々な選択や立場に少なからぬ影響を与えたことでしょう。

学業においては、清氏は当時の日本のエリートが学ぶ最高の教育機関で研鑽を積みました。まず、華族の子弟が多く学ぶ学習院にて学び、知性を磨きました。その後、さらなる学問を深めるため、明治34年（1901年）7月には東京帝国大学文科大学へと進学し、英文学科で学びました。特筆すべきは、その卒業成績が極めて優秀であったことです。その学業における優れた功績が認められ、彼は天皇陛下より学業奨励の証として恩賜の銀時計を授けられるという、当時の学生にとって最高の栄誉に浴しました。これは、清氏が単に家柄に恵まれただけでなく、自らの努力と才能によっても秀でた人物であったことを示すものです。

大学卒業後、清氏は社会の一員としての活動を経て、政界へとその活躍の場を移します。明治41年（1908年）3月7日に行われた貴族院子爵議員の補欠選挙において当選を果たし、以後、日本の立法府の一角を担うこととなりました。貴族院は、皇族、華族、勅任議員などによって構成される議院であり、清氏は互選によって選ばれる子爵議員として、国家の重要事項の審議に参加しました。彼は貴族院内で、当時の有力な会派の一つであった「研究会」に所属し、他の議員たちと協力しながら議会活動を行いました。貴族院議員としての在任期間は非常に長く、当選の日から大正14年（1925年）7月9日まで、実に17年以上にわたってその職責を全うしました。この間、彼は子爵という特別な立場から、時代の変化に対応しつつ、国政に貢献しようと努めたと考えられます。

森 清氏の親族関係は以下の通りです。

実母：広瀬常（広瀬秀雄の長女）
継母：森寛子（岩倉具視の五女）
妻：森淑子（よしこ） - 松平康民の長女
長男：森有剛 - 清氏の没後、子爵位を襲爵しました。

また、栄典として、清氏はその没後の昭和6年（1931年）1月16日付で、従三位から正三位に叙せられています。これは、彼が生前に国家に尽くした功績が没後も認められ、その栄誉が称えられたものと言えるでしょう。

森 清氏は、教育者・外交官として知られる父の血を受け継ぎ、自らも優れた知性と高い学識を持って、激動の明治から大正期にかけて華族、そして貴族院議員として生きた人物でした。その生涯は、当時の日本の社会構造や政治の一端を理解する上で、静かな光を投げかけています。

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