椋鳩十

椋鳩十：動物文学と図書館改革の功績

椋鳩十（むく はとじゅう、1905年1月22日-1987年12月27日）は、日本の小説家、児童文学作家として知られています。本名は久保田彦穂（くぼた ひこほ）。長野県に生まれ、法政大学国文科卒業後、教員を経て、鹿児島県立図書館長を19年間務めました。

作家としての椋鳩十

初期は山窩を題材とした小説を発表しましたが、のちに児童文学、特に動物文学に転向。代表作『大造じいさんとガン』は、現在も小学校の教科書に掲載され、世代を超えて愛されています。

動物の生態を丁寧に描写し、動物たちの視点を取り入れた作品は、子供たちに自然への愛情と敬意を育む役割を果たしました。他に、『孤島の野犬』『マヤの一生』など、多くの名作を世に送り出し、数々の賞を受賞しました。その作品世界は、動物への深い愛情と、自然への豊かな感受性に満ち溢れています。また、郷土である長野や、長く暮らした鹿児島の民話などを題材にした作品も多数残しています。

図書館長としての功績

1947年から1966年まで、鹿児島県立図書館長を務めた椋鳩十は、戦後混乱期の図書館再建に尽力しました。GHQによる資料廃棄命令に巧みに対応しつつ、財政難の中、独自の図書館運営方法を確立しました。それが、図書館学で「鹿児島方式」と呼ばれるものです。

この方式では、県立図書館が中心となり、市町村図書館と連携して運営を行うことで、図書館サービスの網羅性を高めました。市町村に図書館がない地域には、教育委員会や公民館に図書館を設置し、県立図書館が支援することで、地域住民への図書館サービスの提供を可能にしました。これは、現代の図書館ネットワークの原型と言える画期的な試みでした。

さらに、奄美分館の設置や「母と子の20分間読書」運動の推進など、読書推進にも積極的に取り組みました。

多彩な活動と晩年

鹿児島女子短期大学教授なども務め、校歌の作詞なども手がけるなど、その活動は多岐に渡りました。晩年は離島を題材にした作品を発表するなど、創作活動を続けました。

1987年に肺炎のため逝去。長野県喬木村と鹿児島県には、椋鳩十記念館や文学記念館が建立され、その業績は現在も高く評価されています。

受賞歴

片耳の大鹿（1952年・文部大臣奨励賞）
大空に生きる（1961年・小川未明文学奨励賞）
孤島の野犬（1964年・サンケイ児童出版文化賞、国際アンデルセン賞国内賞）
マヤの一生（1971年・国際アンデルセン賞国内賞、児童福祉文化奨励賞、赤い鳥文学賞）
椋鳩十全集（1983年・芸術選奨文部大臣賞）

主な著作

椋鳩十は、数多くの作品を残しました。代表的な作品には以下のものがあります。

『山窩物語鷲の唄』
『山の太郎熊』
『片耳の大鹿』
『大空に生きる』
『孤島の野犬』
『大造じいさんとガン』
『マヤの一生』
『黄金の島』
『日当山侏儒物語』
* 『日高山伏物語』

これらの作品は、現在も多くの読者に愛され、読み継がれています。動物や自然、そして人間の心の機微を繊細に描き出した椋鳩十の作品は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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