植島啓司

植島啓司は、1947年東京に生まれ、宗教人類学者として多岐にわたる研究活動を展開しています。東京大学文学部宗教学科を卒業後、同大学院で研究を続け、シカゴ大学大学院ではミルチャ・エリアーデらに師事しました。1980年からは関西大学で教鞭をとり、その後、ニュースクール大学客員教授、人間総合科学大学教授を経て、現在は京都造形芸術大学教授として、次世代の育成にも力を注いでいます。

植島氏の研究は、フィールドワークを重視しており、ネパール、タイ、インドネシアのバリ島、スペインなど、世界各地で宗教人類学の調査を行っています。これらの調査を通じて、宗教と文化、人間の行動様式との深い関係を明らかにしてきました。

著書も多数あり、初期の作品では、人間の心理や精神構造に深く切り込んでいます。『男が女になる病気』では、医学と人類学の視点から人間の性に対する認識を探求し、『分裂病者のダンスパーティ』では精神疾患を持つ人々の内面世界を描きました。また、『恋愛のディスクール』では恋愛という普遍的なテーマを深く掘り下げています。

1990年代以降は、宗教現象への関心を深め、『天使のささやき』で宗教的な陶酔や不思議な体験について論じ、『聖地の想像力』では人が聖地を求める心理を分析しました。さらに、『競馬の快楽』や『快楽は悪か』といった著作では、快楽や欲望といった人間の根源的なテーマにも切り込んでいます。また、『宗教学講義』では、宗教学をより身近に感じてもらうための試みがなされています。

近年の著作では、より広い視点から社会や文化を考察しており、『偶然のチカラ』や『賭ける魂』では、人間の意思決定や行動に影響を与える要因を探っています。『生きるチカラ』では、現代社会を生き抜くための知恵を提示し、『日本の聖地ベスト100』や『伊勢神宮とは何か』では、日本の宗教文化を再評価する試みが行われています。

さらに、『官能教育』では、愛とセックスに対する教育のあり方を問い、『処女神』では少女が神となる現象を考察するなど、幅広いテーマに取り組んでいます。『運は実力を超える』では、運という不確実な要素が人生に与える影響について考察しています。

植島氏は、単なる研究者としてだけでなく、テレビ番組のキャスターや雑誌での対談など、多岐にわたる活動を通じて、一般の人々にも宗教や文化への関心を広げてきました。特に、漫画家の植田まさし氏や、作文家の高杉弾氏との交流は、氏の多面的な魅力を示すものです。

その活動は、宗教人類学の枠にとどまらず、社会学、心理学、文学など、多様な分野に影響を与え、現代社会における人間の存在や行動を深く考察する上で、重要な視点を提供し続けています。植島氏の研究と著作は、これからも多くの人々に刺激を与え、新たな発見をもたらすでしょう。

もう一度検索