高杉弾

高杉弾：伝説の編集者、文筆家、そしてAV監督

高杉弾（本名：佐内順一郎）は、1954年東京都品川区に生まれ、日本のアンダーグラウンド／サブカルチャー・シーンに大きな足跡を残した編集者、文筆家、実業家、そしてAV監督です。伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』の初代編集長として知られ、その過激で斬新な編集スタイルは、多くの人々に影響を与えました。

生い立ちと初期の活動

幼少期は神奈川県川崎市で過ごし、父親が経営する比較的裕福な家庭で育ちました。しかし、既存の価値観に反発し、常に自由を求めていた高杉は、1969年の国際反戦デー闘争に野次馬として参加。中学時代からはジャズ、黒人音楽、そしてガンジャに傾倒し、植草甚一、筒井康隆、稲垣[[足穂]]などの作家や禅問答の本を愛読しました。

1973年、日本大学芸術学部文芸学科に入学しますが、授業にはほとんど出席せず、ロッカールームを改造してアジトを作り、酒やマリファナをたしなむ日々を送ります。このアジトは、学校に居場所のない学生や女の子たちの溜まり場となり、後の『Jam』編集部の原型となりました。

1974年には、ミニコミ誌『便所虫』を創刊。過激な内容が教授や体育会系の学生に疎まれ、妨害工作に遭いながらも、『BEE-BEE』と改題して月刊で25号まで続きました。この頃、武邑光裕、加藤芳一、林真理子、近藤十四郎らと出会い、〈廃人同盟〉を結成するなど、その活動は多岐にわたりました。

自販機ポルノの黄金時代

1978年、高杉は武蔵小山で偶然拾った自販機本に掲載されていた接写ヌード写真に衝撃を受け、エルシー企画でフリーの編集者として働き始めます。この出会いが、彼の運命を大きく変えました。

エルシー企画では、隅田川乱一と共同で商業デビュー作「Xランド独立記念版」を制作し、1979年には『スキャンダル 悦楽超特急』で編集長を務めます。同誌では、かたせ梨乃宅のゴミ漁りを敢行し、使用済みタンポンなどを誌上で暴露するという過激な企画を実行しました。

1979年3月には、隅田川乱一、八木眞一郎、山崎春美、近藤十四郎らと伝説的自販機本『X-magazine Jam』を創刊。ドラッグ、プロレス、パンク、コミック、宗教、臨済禅、神秘主義、虚構記事、ゴミ漁りなど、多様なテーマを扱った誌面は、多くの読者を魅了しました。特に、山口百恵宅のゴミを漁り、使用済み生理用品などを暴露した「芸能人ゴミあさりシリーズ」は、大きな話題を呼びました。

ボブ・マーリーとの出会いと『HEAVEN』創刊

1979年4月、ボブ・マーリーの来日公演を観に行った高杉は、楽屋に潜り込み、ボブと運命的な出会いを果たします。この体験は、彼にとって重要な啓示となりました。

1980年4月、『Jam』の後継誌『HEAVEN』の初代編集長に就任。しかし、同年8月に版元が移籍し、3ヶ月休刊となります。その後、ラジオ関東で『ウルトラヘヴン放送局』のDJを担当するなど、活動の幅を広げました。

作文家時代とAV監督への転身

1980年冬、『HEAVEN』の編集長を退き、作文家に転身。以降、『朝日新聞』からエロ本まで、幅広い媒体で執筆活動を行いました。1980年代から1990年代にかけては、『ガロ』『宝島』など多数の雑誌で連載を持ち、アンダーグラウンドなサブカルチャーの分野に多大な影響を与えました。

1990年には、AV監督としてデビュー。『高杉弾のイカすSEX天国』を皮切りに、1年間で11本のアダルトビデオを制作しました。

脳内リゾート開発とメディアマン

1991年、AV監督を引退。前衛芸術家の赤瀬川原平らとステレオ写真の愛好団体「脳内リゾート開発事業団／ステレオオタク学会」を結成。カルチャー雑誌『月刊スパイ』で連載を開始しますが、企画したSEX特集が回収騒ぎとなり、連載は中断されました。

1994年からはバリ島へ長期旅行に出かけ、「メディアマン」というコンセプトを強化します。1995年には、私小説『香港夢幻』を上梓し、自身の放蕩生活を赤裸々に告白しました。

隠居生活と現在

1997年、掲載誌の休廃刊が相次ぎ、借金苦も重なり、隠居生活に入ります。作文家以外にも、アダルトビデオ監督、競馬の予想屋、商品先物取引、雑貨屋経営、違法賭博、借金などで生計を立てることもありましたが、生涯定職に就くことはありませんでした。

現在は、青林工藝舎の漫画雑誌『アックス』に不定期で寄稿する以外は、超逸脱的オンラインマガジン《JWEbB》のみで活動しており、多くの病を抱えながら療養生活を送っています。

高杉弾は、その型破りな生き方と多岐にわたる活動を通して、日本のサブカルチャーに大きな影響を与えた人物として、その名は今も語り継がれています。

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