椎名裁定

椎名裁定について

椎名裁定（しいなさいてい）は、1974年に日本の自由民主党において発生した重要な政治的事件です。この裁定では、自由民主党副総裁の椎名悦三郎が次期総裁候補として三木武夫を選出しました。この決定は、政治の内幕や派閥の駆け引きが展開された中で下されたため、党内外で大きな注目を集めました。

経緯

この事件の背景にあるのは、1974年の参議院選挙における自民党の敗北や、立花隆による田中金脈問題の報道です。この影響から、同年11月26日に田中角栄内閣総理大臣が退陣を表明しました。田中の後継者選出は非常に難航し、候補者としては大平正芳大蔵大臣や福田赳夫前大蔵大臣が挙がっていました。しかし、双方の派閥間での対立や国民からの批判も影響し、自民党内の状況は緊迫していました。

その中で、椎名悦三郎は中間派のリーダーとして後継総裁選出の重要な役割を担うこととなります。党内の四役には、田中派の幹事長など様々な利害が絡んでおり、椎名はそのバランスを取ることが求められていました。一時は椎名の暫定政権構想が提起され、大平から「行司がマワシを締めた」と批判されることにもなりますが、椎名はその裁定役としての地位を守り続けました。

椎名裁定の実施

1974年11月30日、自民党本部での会合において、椎名は自身を総裁候補から外し、最終的に大平、福田、中曽根康弘、そして三木武夫の4名を候補としました。この会合では、党改革や人事について建設的な議論が交わされ、椎名自身も他派閥との協力を強調しました。「今夜もう一晩真剣に考えて、私なりの結論を出したい。」と締めくくり、翌日の裁定に備えました。

12月1日、椎名は自民党本部の総裁室に大平、福田、中曽根を招集し、議論を経た後、裁定文を読み上げることで三木を次期総裁として認める決定を下しました。この「椎名裁定」と呼ばれる出来事は、福田支持の派閥と大平支持の派閥という二つの大きな対立をどう調整するかという点で、椎名の政治的手腕が試されるものでした。最終的に、三木を支持する意見が強まり、彼が新総裁として選出される運びとなりました。

決定の影響

この裁定により、三木は自由民主党第7代総裁に選出され、その後、内閣総理大臣にも就任しました。この決定は、当時の政局において大きな意味を持つものであり、多くの党関係者が賛同し、時には異論も交わされましたが、最終的には椎名の選択が広く認められる結果となりました。

椎名裁定は、自由民主党内の権力闘争や派閥の力学を反映した重要な出来事であり、自民党政界の中での権力の移行を示す一つの象徴として、今でも語り継がれています。政治の舞台裏では緊張感が渦巻いていたものの、この決定は党内外に多くの影響を与え、三木政権の誕生へと繋がりました。

もう一度検索