楊維楨

楊維楨（よう いてい、1296年 - 1370年）は、元代末期に活躍した詩人です。字は廉夫、号は鉄崖と称しました。彼の生涯は、伝統的な価値観や形式にとらわれない、自由な精神に満ちていました。

生涯

楊維楨は、紹興府諸曁県の出身で、生家は商人であったと考えられています。泰定4年（1327年）に進士に及第し、官僚としての道を歩み始めました。しかし、故郷で税務官吏を務めた後、その職を辞し、各地を放浪する生活を選びました。放浪中には、各地の詩社を指導し、多くの詩人を育成しました。その波乱に満ちた75年の生涯は、彼の作品に深い影響を与えています。

詩風

楊維楨の詩風は、常識や日常の枠を超えることを目指した、華麗で自由奔放な表現を特徴としています。彼は、過去の詩人、特に六朝時代の『楽府』、唐代の李白や李賀といった詩人たちを模範とし、その影響を受けつつも、独自の境地を開拓しました。吉川幸次郎は、楊維楨を「南方市民文学の指導者」と評し、その斬新な詩風を高く評価しました。

著作

楊維楨は、数多くの著作を遺しており、その文学的才能の高さを示しています。主な著作には以下のものがあります。

『安岳集』
『春秋合題著説』
『四書一貫録』
『五経鈐鍵』
『史義拾遺』
『鉄崖古楽府』10巻
『楽府補』6巻
『東維子集』30巻
『楊鉄崖詩集』26巻

これらの著作は、彼の詩風だけでなく、思想や学問に対する深い理解を示しています。

参考文献

楊維楨の研究には、以下の文献が役立ちます。

『元史』巻190
『新元史』巻238
『明史』巻285
『明史稿』巻266
『明書』巻145
『国朝献徴録』巻115
華寧『楊維楨』（石頭出版、2006年）ISBN 978-957-9089-86-9
* 吉川幸次郎『元明詩概説』（岩波文庫、2006年）ISBN 978-4-00-331524-8

これらの参考文献は、彼の生涯や作品、そして彼が活躍した時代の文化的な背景を理解する上で重要な資料となります。

楊維楨は、その独特な詩風と自由な精神によって、元代の文学に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今なお多くの人々に読み継がれ、その影響は現代にも及んでいます。

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