楠木正元

楠木正元は、室町時代に活躍した武将であり、南北朝時代を代表する忠臣、楠木正成の孫にあたります。父は正成の三男である楠木正儀で、幼名は二郎と伝えられています。彼は南朝に仕え、河内介という官職に就いていました。

1392年（元中9年/明徳3年）の春、畠山基国率いる室町幕府軍によって、楠木氏の本拠地であった千早城が陥落しました。正元は残党と共に捕らえられ、斬首されたとされています。しかし、『桜雲記』下巻には、千早城陥落後、南北朝合一までの間に、正元が密かに京に入り、時の将軍足利義満を暗殺しようとしたという記述があります。この計画は実行前に露見し、正元は処刑されたとされています。当時の人々は、正成や正行の忠義の志を受け継ぐ者として、正元を称賛したと言われています。

正元の忠義を称え、大正4年（1915年）には、大嘗会において従四位が追贈されました。

江戸時代後期の文学作品である曲亭馬琴の『松染情史秋七草』では、正元の逸話を基にした物語が描かれています。この作品では、正元は足利義満暗殺を遂行するものの失敗し、翌日に処刑されるという設定になっています。また、この作品では、正元の遺児である操丸（久松）が主人公として描かれており、正元の死後もその血筋が受け継がれていく様子が描かれています。

このように、楠木正元は、南朝の武将として、また、足利義満暗殺未遂事件の当事者として、後世に語り継がれる人物です。彼の忠義心は、文学作品にも影響を与え、現代においてもその名が知られています。楠木正成から続く忠義の血筋を受け継いだ人物として、その名は歴史に刻まれていると言えるでしょう。



参考文献

経済雑誌社 編「橘氏系図」『群書類従』 4巻、経済雑誌社、1893年、222–230頁。doi:10.11501/1879789。
近藤瓶城 編「桜雲記」『史籍集覧』 3巻（再）、近藤出版部、1906年。doi:10.11501/3431170。
『贈位功臣言行録』国民書院、1916年。doi:10.11501/955104。
藤田精一『楠氏後裔楠正具精説』湊川神社、1938年。
* 中尾, 和昇「『松染情史秋七草』論」『國文學』第92巻、関西大学国文学会、2008年、211–226頁。

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