贈位

贈位（ぞうい）について

贈位は、生前に顕著な功績を残した人に対して、亡くなった後に位階を贈呈する制度です。この制度は、時には「追贈」や「追賜」とも呼ばれ、官職を贈与する際は「贈官」という形になります。例えば、「贈太政大臣」といった具合です。

制度の歴史的背景

近世以前の贈位

この制度の起源は天武天皇2年（673年）に遡ります。当時、壬申の乱で功績を残した坂本財が大臣級の冠位を持っていたため、小紫位が贈られました。このように、初期の贈位は乱や戦に関連する功績が多く、百済の沙宅昭明にも贈位が行われました。その後、『養老令』や『大宝令』において、戦死者に対する贈位の場合はその子孫に生前の位階と同等の位が授けられることが定められました。

贈位の目的は、単に功績を称えるだけでなく、無実の罪で亡くなった者や、遣唐使の慰霊など、さまざまな背景がありました。贈位の場合には「贈」という文字が加えられ、例えば「贈正四位」といった形で表現されました。また、僧侶にも贈位が行われ、円珍が大師号とともに法印大和尚の僧位を贈られる事例も存在しました。

近代の贈位

明治時代になると、贈位はさらに顕彰の意味合いが強くなりました。内閣賞勲局が実務を担い、戦国時代の功績などで尊ばれた人物にも贈位が与えられるようになりました。例えば、毛利元就はその功績を評価され正一位の称号を受けました。また、江戸時代の大名も、多くが贈位を受けています。

特に留意すべきは、贈位が亡くなった後に行われるものである一方、生存者に誤って贈位が与えられた場合、後に取り消されることもあったことです。贈位の手続きには、贈位記を持った策命使が故人の墓前で読み上げ、遺族に伝えるという儀式が含まれていました。場合によっては、代表の子孫が決まるまでに長い時間がかかることもありました。

明治28年（1895年）には、「戦死者贈位並叙位ノ件」が制定され、戦死した軍人に対して生前の位階に関わらず従五位以上が贈られることが定められました。以降、戦没者に対する叙位を復活させる動きが進み、昭和戦前期には重要な式典時に贈位が行われる慣習も存在しました。

戦後の贈位

戦後、新たな栄典制度が確立されるまで、贈位制度は一時停止されることもありました。その後、昭和22年（1947年）に閣議決定により、退職者や死没者に対する叙位が再開されました。昭和35年（1960年）には戦没者に対する叙位と叙勲が復活し、戦後も贈位が維持されることとなりました。

日本国憲法のもとでの叙位は、内閣の助言を経て天皇が行う国事行為として位置付けられ、民間の受賞者は少なく、主に政治や官僚に関与した人々に限られる傾向がありました。以上のように、贈位は日本の歴史の中で特有の制度であり、時間とともに変遷を遂げてきました。

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