楠田實

楠田 實 (くすだ みのる)

人物背景

楠田實（1924年11月7日生まれ - 2003年9月29日）は、日本の政治評論家かつジャーナリストとして広く知られています。彼は鹿児島県出身で、戦時中は日本陸軍に従軍し、中国戦線で大陸打通作戦に参加しました。その後、早稲田大学の専門部商科に入学し、1952年に卒業。卒業後は産経新聞社で勤務を始めます。

政治部記者としての彼のキャリアは三木武吉や河野一郎の番記者を経て、当時大蔵大臣だった佐藤栄作の番記者に転身することで大きな転機を迎えます。佐藤栄作はメディアに対して非常に閉鎖的な姿勢を持っていたため、楠田は新たな信頼関係を築くことに成功しました。

政治における役割

1964年1月、楠田は「佐藤オペレーション」を設立しました。これはケネディのブレーントラストにインスパイアされた政策を検討するグループであり、佐藤が1964年7月に自由民主党総裁選に出馬する際に重要な役割を果たしました。このグループでは、高度成長の問題点を是正し、沖縄返還などの外交問題を解決するための政策の検討が行われました。その成果は「明日へのたたかい」と題され、発表されました。

1967年には、産経新聞を退社し佐藤の秘書官に就任します。彼の主な業務にはマスコミ対応や知識人との交流を通じた政策アイデアの収集が含まれていました。彼が接触した有識者には、高坂正堯、永井陽之助、江藤淳などがおり、戦後初期の政府への知識人の協力としては画期的でした。

首席秘書官としての功績

佐藤栄作内閣の首席秘書官として、楠田は1967年から1972年までその職務を全うしました。彼は政務秘書官としての基礎業務を遂行しつつ、新しい知識人グループの形成に取り組みました。1972年の佐藤退任時には内閣記者会との調整に失敗し、印象的な退任会見での衝突の一因ともなった経緯があります。

このトラブルの背景には、内閣官房長官と佐藤との接触の減少などの政治的な対立があったとされ、楠田は自らの立場を強調していました。一方で、竹下登官房長官はこの問題が業務に起因するものと見ていました。

その後の活動

内閣を辞した後、楠田は「社会工学研究所」の理事長を務め、1976年の衆議院選挙に無所属で出馬しますが、当選には至りませんでした。1977年からは福田赳夫内閣で内閣調査員に就き、スピーチライターとしても活動を続けます。その後も様々な政治家の側近として活動し、特に安倍晋太郎のスピーチライターとして知られています。

1980年代には国際交流基金での非常勤理事や監事などの役職を歴任し、日米センターの初代所長となります。2000年には国際文化交流の貢献により銀杯を授与され、2001年には彼の秘書官時代の日記集が公表されました。

家族と著作

楠田の家族には元外交官の娘・楠田かおるがいます。彼自身の著作には、『首席秘書官―佐藤総理との10年間』や『楠田實日記』があります。彼の政治的影響力や生涯は、多くの文献に綴られており、後世に継承されています。楠田實は2003年にその生涯を閉じました。

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