楠田薫

楠田薫：日本の銀幕と舞台を彩った女優の生涯

楠田薫(くすだ かおる)は、1921年3月25日、福岡県に生まれ、2012年6月1日に亡くなった日本の女優です。本名は内野薫。夫は大学教授の内野和夫氏でした。十文字高等学校卒業後、1938年に日活に入社し、1939年の映画『女性の力』で女優デビューを果たしました。

日活での活動後、興亜映画や瑞穂劇団を経て、1946年には俳優座に入団。俳優座では長年にわたって活躍し、ベテランとしての実績を積みました。しかし、1971年には、中村敦夫や原田芳雄といった若手俳優たちの劇団改革への動きに共感し、俳優座を退団するという決断を下しました。この行動からも、楠田薫の時代の流れに敏感で、常に前向きな姿勢を持っていたことが伺えます。

彼女の女優人生は、映画、テレビドラマ、舞台と多岐に渡り、幅広い役柄を演じきりました。映画では、1950年代から1980年代にかけて数多くの作品に出演。時代劇から現代劇まで、様々なジャンルでその演技力を発揮しました。例えば、『愛と憎しみの彼方へ』ではアイヌの娘を演じ、その繊細な演技は高い評価を受けたとされています。また、1960年代には『男嫌い』や『五瓣の椿』といった、現代社会の複雑な人間関係を描いた作品にも出演。時代を超えて観客の心を掴む演技で知られました。

テレビドラマにおいても、彼女の活躍は目覚ましく、NHK連続テレビ小説『おはなはん』や『マー姉ちゃん』といった国民的な人気作品への出演は、幅広い世代からの支持を集める一因となりました。さらに、『東芝日曜劇場』、『キイハンター』、『Gメン'75』、『水戸黄門』、『特捜最前線』など、数々の長寿番組や人気シリーズにも参加し、個性豊かなキャラクターを演じ分けることで、視聴者から長く愛されました。

舞台においても、シェイクスピア作品から近代劇まで、幅広い作品に出演し、確かな演技力で観客を魅了しました。『検察官』『女学者』『かもめ』『三人姉妹』など、古典から現代作品まで、その演技力は高く評価されています。

楠田薫は、映画、テレビドラマ、舞台と、あらゆるメディアで活躍した、まさに日本の演劇界を代表する女優でした。彼女のキャリアは、戦前から戦後にかけての日本の社会変化や文化の変遷を映し出していると言えるでしょう。多様な役柄を演じ分け、それぞれの作品に深みと彩りを加えた彼女の存在は、後世の俳優たちにとっても大きな影響を与え続けていることは間違いありません。数々の名作に出演し、多くの視聴者・観客を魅了した楠田薫の功績は、日本の芸能史に燦然と輝くものと言えます。

【主な出演作品】

映画
善魔 (1951年)
恋文裁判 (1951年)
愛と憎しみの彼方へ (1951年)
家我が家は楽し (1951年)
悲劇の将軍 山下奉文 (1953年)
そして多くの作品…

テレビドラマ
東芝日曜劇場
連続テレビ小説 おはなはん (1966年)
連続テレビ小説 マー姉ちゃん (1979年)
キイハンター
Gメン'75
水戸黄門
特捜最前線
そして多くの作品…

舞台
検察官
女学者
かもめ
三人姉妹
* そして多くの作品…

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