愛と憎しみの彼方へ

『愛と憎しみのかなたへ』は、1951年に公開された東宝製作、谷口千吉監督による映画作品です。

物語の舞台は、極寒の地にそびえ立つ北海道の網走刑務所。ある嵐の夜、脱獄を知らせるサイレンが鳴り響きます。当直の久保部長は、囚人にも情けをかける人情家でしたが、今回の脱獄の首謀者が、模範囚として信頼していた坂田五郎であったことに、強い違和感を覚えます。

調査の結果、凶悪な囚人である鎌田与助が、坂田の脱獄計画を妨害されたことに腹を立て、逆に彼を陥れようと企てたことが判明します。鎌田は、伊達という囚人に、坂田の妻であるまさ江が医師の北原と不倫関係にあるという嘘の情報を吹き込みます。それを信じた坂田は、真実を確かめたい一心で脱獄を決意したのでした。

久保は、今回の事件の責任を取って辞職を決意しますが、事件の真相を知り、坂田の妻が濡れ衣を着せられていることを伝え、これ以上の罪を犯させたくないと考えます。彼は、捜査隊に参加し、先頭に立って坂田を追跡します。物語は、極限状態での人間模様、愛憎、そして真実を追い求める姿を、北海道の厳しい自然を背景に描いています。

この作品では、三船敏郎が脱獄囚の坂田五郎を演じ、水戸光子が坂田の妻まさ江を演じています。また、池部良が医師の北原浩二、志村喬が久保部長、小沢栄が鎌田与助を演じるなど、豪華なキャストが物語を彩ります。

キャスト

坂田五郎：三船敏郎
坂田まさ江：水戸光子
坂田誠：伊東孝
北原浩二：池部良
久保部長：志村喬
鎌田与助：小沢栄
真志保：上田吉二郎
伊達：木村功
田村：稲葉義男
木村：水谷史郎
近藤：田島義文
刑務部長：三津田健
捜査本部部長：清水元
看守長：佐々木隆
小島看守：近藤宏
新聞記者A：佐野浅夫
新聞記者B：岡部正
新聞記者C：篠田實
アイヌの娘：楠田薫
歌う受刑者：大村千吉
飯場の親分：龍岡晋

スタッフ

製作：田中友幸
監督：谷口千吉
脚本：谷口千吉、黒澤明
原作：寒川光太郎
撮影：玉井正夫
美術：北辰雄
音楽：伊福部昭
録音：藤好昌生
照明：岸田九一郎

『愛と憎しみのかなたへ』は、人間の情念と、それに翻弄される人々の姿を、重厚なドラマとして描いた作品です。極寒の地を舞台に繰り広げられる人間ドラマは、観る者に深い感動を与えます。

もう一度検索