楢 (楢型駆逐艦)

大日本帝国海軍 駆逐艦「楢 (初代)」について

大日本帝国海軍がかつて保有した駆逐艦に「楢（なら）」という名の艦があります。この「楢」は、楢型駆逐艦の第一番艦として建造されました。後に登場する同名の松型駆逐艦「楢」と区別するため、一般的には「楢 (初代)」あるいは「楢I」と表記されています。その短いながらも、駆逐艦、掃海艇、そして雑役船と様々な役目を担った本艦の足跡を辿ります。

建造

「楢 (初代)」は、歴史ある横須賀海軍工廠にて建造されました。起工は1917年（大正6年）11月8日です。工事は順調に進み、翌1918年（大正7年）3月28日の午後3時30分に無事進水式を迎えました。その後、最終的な艤装や調整が行われ、同年4月30日には竣工に至りました。

艦歴の変遷

竣工後、本艦は駆逐艦として就役しました。その比較的短い駆逐艦としての運用期間において、多くの海軍士官が艦長として指揮を執りました。
まず、艤装員長としては山田松次郎少佐が1917年12月1日から着任し、1918年4月1日からは初代駆逐艦長を兼務しました。その後、1920年3月1日まで山田少佐が艦長を務めました。
続く駆逐艦長には、赤沢堅三郎少佐（1920年3月1日 - 12月1日）、中円尾義三大尉（心得、1920年12月1日 - 1921年12月1日、その後少佐として1921年12月1日 - 1922年12月1日）、椛島節雄少佐（1922年12月1日 - 1924年4月1日）、畠山耕一郎少佐（1924年4月1日 - 12月1日）、野末信次郎少佐（1924年12月1日 - 1925年12月7日）が就任しました。
1925年12月7日からは加来博胤中佐が兼務で艦長となり、1926年4月20日まで指揮を執りました。その後を多田武雄少佐（1926年4月20日 - 1926年11月1日）、伊崎俊二大尉（1926年11月1日 - 1927年12月1日）、直塚八郎少佐（1927年12月1日 - 1928年12月10日）が引き継ぎました。
1928年12月10日からは横山茂中佐が兼任で艦長となり、その後、正式に就任して1929年11月30日までその任にあたりました。小島斉志少佐が1929年11月30日から1930年5月26日まで艦長を務めた後、駆逐艦長として最後に指揮を執ったのは藤田友造大尉で、1930年5月26日から掃海艇への転籍日である1930年6月1日まで艦長を務めました。

駆逐艦としての任務を終えた「楢」は、1930年（昭和5年）6月1日付けで掃海艇へと種別が変更されました。これに伴い、艦名も「第九号掃海艇」と改められました。掃海艇長としては、駆逐艦長を務めた藤田友造大尉が引き続き1930年6月1日から1931年12月1日まで指揮を執りました。その後、野口照隆少佐（兼任、1931年12月1日 - 1932年2月1日）、そして有田貢少佐（兼任、1932年2月1日 - 1932年4月1日）が掃海艇長を務めました。

掃海艇としての運用期間を経て、本艦はさらにその役目を変更しました。1936年（昭和11年）4月1日には雑役船に指定され、再び「楢」という名に戻されました。

その後

雑役船として運用された「楢」は、1940年（昭和15年）11月15日をもって海軍籍から除かれ、廃船となりました。艦としての長い歴史に幕を下ろしたのです。その後、第二次世界大戦中に解体され、その船体の一部は軍港として知られる呉や、その近隣にある吉浦港において、浮桟橋として再利用されたと記録されています。建造から様々な任務を経て、最後は資材として活用されるという、旧式艦艇の一般的な運命を辿った一隻と言えるでしょう。

「楢（初代）」は、大正期に建造され、駆逐艦、掃海艇、そして雑役船として多目的に利用された艦艇として、その生涯を終えました。その艦歴は、当時の日本海軍における艦艇運用の変遷の一端を示す存在と言えるでしょう。

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