楢型駆逐艦

楢型駆逐艦

楢型駆逐艦は、第一次世界大戦中に地中海へ派遣された桃型駆逐艦の代替艦として建造された、日本海軍の二等駆逐艦です。6隻の同型艦が存在し、日本の国防に大きく貢献しました。

計画と建造

1917年（大正6年）5月、海軍大臣から内閣総理大臣へ駆逐艦6隻の建造に関する請議が提出され、直ちに予算が承認されました。当時の予算額は1隻あたり1,696,792円、総額10,180,752円にのぼりました。建造は、横須賀、呉、佐世保、舞鶴の各海軍工廠で分担して行われ、同年10月から11月に起工、翌1918年（大正7年）3月から4月にかけて全艦が竣工しました。

第一次世界大戦において、日本は連合国側として参戦し、戦勝国の一員となりました。楢型駆逐艦は、大戦中に竣工し、日本近海や関東州周辺の警備任務に従事しました。大戦終結後、日本は国際連盟の常任理事国となり、委任統治領となった南洋群島の警備も担当することになり、楢型駆逐艦は広大な領海の警備に貢献しました。

ネームシップである「楢」は、12センチ45口径主砲3基と最大31ノットの速力を有し、バランスの取れた性能から重宝されました。故障も少なく、領海や南洋地域の国防に尽力し、後に雑役船や掃海艇としても活躍しました。昭和15年11月15日に老朽化のため廃船となりましたが、船体は約90mの防波堤用資材として再利用されました。

艦型

基本計画番号は桃型と同じF27ですが、地中海での運用実績を踏まえ、船体の各部が補強され、排水量が15トン増加しました。機関出力も増加していますが、これは排水量の増加に対応し、桃型と同等の速力を維持するための措置です。

運用

大正末期から昭和初期にかけて、楢型駆逐艦は中国方面へしばしば進出し、警備任務を行いました。これは、二等駆逐艦が吃水が浅く、長江河口付近での行動に適していたこと、また、小型艦であるため航続力や凌波性の不足が中国沿岸では問題とならなかったためです。

同型艦

楢（なら）: 1917年11月8日起工、1918年3月28日進水、4月30日竣工。1930年掃海艇に転籍、1936年雑役船、1940年除籍後解体。
桑（くわ）: 1917年11月5日起工、1918年2月23日進水、3月31日竣工。1933年除籍、1936年台風で沈没後解体。
椿（つばき）: 1917年11月5日起工、1918年2月23日進水、4月30日竣工。1935年除籍、海軍機関学校の教材、終戦時は呉の浮き防波堤。
槇（まき）: 1917年10月16日起工、1917年12月28日進水、1918年4月7日竣工。1934年除籍、海軍工機学校教材。
欅（けやき）: 1917年10月16日起工、1918年1月15日進水、4月20日竣工。1933年除籍。
榎（えのき）: 1917年10月1日起工、1918年3月5日進水、4月29日竣工。1930年掃海艇に転籍、1940年除籍、呉の魚雷実験部の防波堤として終戦。

駆逐隊・掃海隊の変遷

楢型駆逐艦は、2つの駆逐隊を編成しました。

第二駆逐隊
楢、榎、海風、山風で編成。
第三十二駆逐隊、第一十七駆逐隊を経て、第六掃海隊に改編。
第四駆逐隊
桑、槙、欅、椿で編成。
第九駆逐隊に改称。

各艦は、それぞれの時代において、日本の海軍力の一翼を担い、国防に大きく貢献しました。

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