多田武雄

多田武雄：激動の時代を駆け抜けた海軍軍人

多田武雄は、1890年（明治23年）に岩手県で生まれ、1953年（昭和28年）に62歳で没した日本の海軍軍人です。最終階級は海軍中将。

生い立ちと海軍入隊

盛岡中学校長の二男として生まれた多田は、東京府立第一中学を経て海軍兵学校に入校。1912年（明治45年）に卒業（40期）し、同期には大西瀧治郎、宇垣纏、山口多聞など、後に名を馳せる軍人がいました。翌年、海軍少尉に任官。

呉防備隊から軍令部へ

1918年（大正7年）には呉防備隊分隊長に就任しますが、病気のため一時待命。1920年（大正9年）に軍令部へ復帰し、その後、駆逐艦の分隊長や井上良馨元帥付副官などを歴任しました。

駆逐艦長、そして海軍中佐へ

1924年（大正13年）には駆逐艦長として「菊月」に着任。その後、「蔦」や「楢」といった駆逐艦の艦長を歴任し、1930年（昭和5年）に海軍中佐へ昇進しました。練習艦隊参謀や特務艦「鶴見」艦長も務め、1934年（昭和9年）に海軍大佐に進級。

人事局、そして戦艦「霧島」艦長

1935年（昭和10年）には人事局第2課長に転任。1938年（昭和13年）には戦艦「霧島」艦長に就任しました。その後、第3遣支艦隊参謀長や興亜院調査官（青島出張所長）などを歴任し、1940年（昭和15年）に海軍少将へ昇進。

太平洋戦争と航空戦

1941年（昭和16年）には第11航空艦隊第21航空戦隊司令官に就任し、太平洋戦争開戦を迎えました。台湾からフィリピン攻略戦での航空戦を指揮し、ラバウルに進出。激戦の中、1空や台南空、3空などの部隊を率いて戦いました。1942年（昭和17年）には南西方面艦隊兼第二南遣艦隊参謀長に就任。1943年（昭和18年）には第13航空艦隊参謀長も兼任し、同年、海軍中将に進級しました。

海軍次官、そして終戦へ

1944年（昭和19年）には航空本部総務部長、そして海軍省軍務局長を歴任。同年、陸海技術運用委員会の副委員長として、特殊奇襲兵器開発のために陸海民の科学技術の一体化を図りました。

1945年（昭和20年）、海軍次官に就任。米内光政海相のもと、終戦工作が進められる中、当初は穏健派でしたが、大西瀧治郎らに影響され、最後は徹底抗戦派に与しました。実質的に最後の海軍次官となり、敗戦後に予備役編入。

戦後と公職追放

1948年（昭和23年）には公職追放の仮指定を受けました。追放中に兵器処理問題で衆議院に証人喚問されましたが、1952年（昭和27年）に追放解除。

親族

長男は海軍少佐の多田圭太、弟には海軍機関中将の多田力三、義兄には海軍少将の鳥崎保三がいます。

栄典

多田武雄は、正八位から始まり、従七位、正七位と位階を重ねています。

まとめ

多田武雄は、明治から昭和の激動の時代を、海軍軍人として駆け抜けました。海軍の要職を歴任し、太平洋戦争では航空戦を指揮。終戦間際には海軍次官を務めるなど、その生涯は日本の近現代史を色濃く反映しています。

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