極道の妻たち

『極道の妻たち』（ごくどうのおんなたち）

『極道の妻たち』は、日本のヤクザ映画の金字塔として知られる作品で、1986年に公開されました。この映画は、監督に五社英雄、主演に岩下志麻を迎え、女性たちの視点からヤクザの世界を描くという新しい試みがなされています。シリーズは「極妻」として親しまれ、その後も長きにわたり続編が作られ、最終的には16作にも及ぶロングランシリーズとなりました。岩下の主演作は1998年に公開された『極道の妻たち 決着（けじめ）』で一旦の完結を見せました。

概要と作品の背景

本作は、家田荘子のルポルタージュを原作とし、これまで主に脇役として描かれてきた女性の視点からヤクザの抗争と復讐を描いた異色作品です。主人公たちは、愛する夫を組織間の争いで失った女性たちであり、自らの手で仇を討つ姿を描いています。この「女の世界」は、東映の従来の任侠映画とはまた違ったアプローチであり、当時の男性中心の映画業界において新しい風を吹き込むものでした。

『文化通信ジャーナル』によると、本作は女性版実録シリーズの先駆けとも言われています。

制作の背景とキャスティング

制作企画は日下部五朗が担当し、原作に強い興味を持ちました。彼は、家田荘子と直接会って映画化の交渉を行い、安全な企画として東映に持ち込むことに成功します。この新たな女性主導の映画には、魅力的なキャストが多数参加することになるのですが、岩下志麻が最初の主役として選ばれたことが特に印象的です。さらに、彼女の存在感は『極妻』シリーズのイメージを強固にしました。

シリーズ全体では、岩下の他にも十朱幸代、三田佳子、山本陽子などが主演女優として続きました。キャスティングの際、主要な女優の選定が繰り返し行われたことが特徴です。特に岩下の演じる姐さんは、彼女の代表作となり、シリーズ終了後も多くのパロディ制作の元となりました。このように、岩下にとって「極妻」は女優としての重要な財産であったことがうかがえます。

ストーリーとテーマ

第一作では、大阪のヤクザ組織・堂本組に焦点が当てられ、主人公の粟津環（岩下志麻）が夫の服役中に組を仕切る姿を通じて、権力争いや愛情の葛藤が描かれます。妹の真琴（かたせ梨乃）との関係や、組の抗争、さらには恋愛模様が織り交ぜられ、女性たちの立ち位置が鮮明に描かれます。本作のキャッチコピー「愛した男が、極道だった」とは、主人公の苦悩を象徴する言葉でもあります。

シリーズの影響と評価

公開当初、観客はその新しいスタンスに驚かされ、特に女性の視点を尊重した描写が多くの支持を集めました。また、本シリーズは1986年に施行された「男女雇用機会均等法」との時期的な重なりも相まって、より多くの共感を得る要因となりました。このように、『極道の妻たち』は映画としてだけでなく、社会的な背景とも関連づけられた作品でもありました。

興行的にも成功を収め、特にシリーズ全体のビデオ販売は劇場公開以上の収益を上げることとなりました。『極妻』は、男性優位のヤクザ映画の中において女性が強く生きる姿に多くのファンを虜にし、他の映画作品にも大きな影響を与える存在購となったのです。

まとめ

『極道の妻たち』は、ただのヤクザ映画ではなく、女性の新たな表現を試みた作品であり、時代を先取りしたエンターテインメントであることを証明しています。このシリーズは、その後の多くの映画やドラマに影響を与え、男女平等な視点からの映画制作の重要性を再認識させるものでした。

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