概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害は、体内時計（概日リズム）のずれによって、社会生活で求められる時間に寝起きすることが困難になる睡眠障害群です。体内時計の要求する時間であれば十分な睡眠が取れるにも関わらず、一般的な時間帯での睡眠が妨げられるのが特徴です。

概日リズムとは

私たちの体には、約24時間周期で繰り返される体内時計、すなわち概日リズムが備わっています。このリズムは、睡眠・覚醒だけでなく、ホルモン分泌、体温調節など、様々な生理機能に影響を与えています。体内時計は、眠気や覚醒のタイミングを調整し、体が睡眠に適した状態になる時間を知らせてくれます。しかし、この周期は厳密に24時間ではなく、個人差や環境要因によって多少のずれが生じます。通常、光を浴びることでリセットされ、外界の24時間周期に同調します。

概日リズム睡眠障害の種類

概日リズム睡眠障害は、原因によって外因性と内因性に分類されます。

外因性

時差ぼけ: 時差の大きい地域への移動によって、体内時計が急激にずれることで起こります。睡眠障害や疲労感、胃腸障害などの症状が現れます。
交代勤務性睡眠障害: シフト勤務など、不規則な勤務時間によって体内時計が乱れることで起こります。日中の眠気や入眠困難、疲労感などが現れます。

内因性

睡眠相後退症候群 (DSPS): 睡眠・覚醒のタイミングが通常よりも大幅に遅れる状態です。夜遅くまで眠れず、朝起きるのが困難になります。
睡眠相前進症候群 (ASPS): 睡眠・覚醒のタイミングが通常よりも大幅に早まる状態です。夕方早くから眠くなり、早朝に目が覚めてしまいます。
非24時間睡眠覚醒症候群: 24時間の明暗周期に体内時計が同調せず、毎日睡眠・覚醒のタイミングがずれていく状態です。不眠や過眠が周期的に現れます。
不規則型睡眠・覚醒パターン: 睡眠・覚醒のタイミングが不規則で、1日に何度も短い睡眠を繰り返す状態です。

診断

概日リズム睡眠障害の診断には、詳細な問診と睡眠日誌が重要です。睡眠日誌には、毎日の就寝・起床時間、睡眠時間、日中の眠気などを記録します。必要に応じて、活動量計（アクチグラフ）を用いて睡眠・覚醒リズムを客観的に評価することもあります。

治療

概日リズム睡眠障害の治療法は、原因や症状に合わせて選択されます。

行動療法・睡眠衛生: 規則正しい生活習慣を心がけ、昼寝やカフェイン摂取を避けるなど、睡眠を妨げる要因を取り除くようにします。
高照度光療法: 高照度の光を浴びることで、体内時計を調整します。睡眠相を前進させたい場合は朝に、後退させたい場合は夜に光を浴びます。
メラトニン療法: メラトニンは、睡眠を促すホルモンです。服用する時間帯によって、睡眠相を前進または後退させる効果があります。
時間療法: 毎日少しずつ就寝・起床時間をずらすことで、体内時計を調整します。
* 薬物療法: モダフィニルなど、覚醒を促す薬が用いられることもありますが、副作用に注意が必要です。

サーカディアンハウスという考え方

睡眠医療専門医の小池茂文氏は、住環境が体内時計に与える影響を重視し、「サーカディアンハウス」という概念を提唱しています。自然光を取り入れたり、生活音に配慮した間取りにすることで、質の高い睡眠を得られる住環境を目指します。特に、朝に太陽光を浴びながら朝食を摂り、排便をすることは、体内時計をリセットし、体を覚醒させる上で重要であると述べています。

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