榊原家本源氏物語

榊原家本源氏物語：鎌倉時代から伝わる貴重な源氏物語写本

榊原家本源氏物語は、源氏物語の写本の中でも特に貴重な存在として知られています。その名の通り、越後国高田藩の榊原家に伝来したことからこの名で呼ばれています。現在、国文学研究資料館に所蔵されており、研究者にとって重要な史料となっています。

写本の概要と特徴

現存するものは17帖のみですが、その価値は非常に高いです。 中でも桐壺は室町時代の三条西実隆の筆と推定されており、他の巻は鎌倉時代中期から末期にかけて書かれたものと考えられています。特に注目すべき点は、二条為氏という人物が筆者であるという伝承が残されている点です。二条為氏は、当時の貴族社会において重要な役割を担っていた人物であり、その筆による源氏物語の写本が現代に残されていることは、歴史的にも極めて重要な意味を持ちます。

写本の筆跡や紙質などの特徴から、鎌倉時代中期の写本群と関連付けられる可能性が高いとされています。これは、当時の人々の書写技術や文化を知る上で貴重な資料です。また、本文の異同を比較検討する際に、他の写本と比較することで、源氏物語成立の過程や本文の変遷を解明する手がかりとなる可能性があります。

校本への採用と研究史

榊原家本は、複数の校本に採用されており、学術的な研究においても重要な役割を果たしています。特に、『校異源氏物語』や『源氏物語大成校異編』といった主要な校本では、その本文が参照され、源氏物語本文の異同を明らかにする上で貢献しています。これらの校本では、「榊」という写本記号で示され、青表紙本系統の本文を持つ写本の一つとして位置付けられています。ただし、桐壺以外の16帖が校異に採用されています。

大津有一は、その著作『源氏物語事典　下巻』の中で、「榊原家蔵源氏物語」として、この写本を詳細に解説しています。彼の研究は、榊原家本の研究史における重要な一歩であり、後の研究者にも大きな影響を与えています。

影印本の出版

近年、国文学研究資料館が中心となり、榊原家本の影印本が出版されました。これにより、研究者だけでなく一般の人々も、この貴重な写本を容易に閲覧・研究できるようになりました。影印本の出版は、源氏物語研究の進展に大きく貢献するだけでなく、広く一般への普及にもつながるでしょう。この影印本の出版により、より多くの研究者や愛好家が、この貴重な写本に触れる機会を得ることが期待されます。

結論

榊原家本源氏物語は、その成立背景や本文の特徴、そして歴史的な経緯から、源氏物語研究において極めて重要な写本と言えるでしょう。今後も、この写本に関する研究は継続され、源氏物語研究の発展に貢献していくものと期待されます。特に、今後、更なる科学的分析による詳細な調査が進むことで、より正確な年代特定や筆者特定、さらには本文の変遷に関する新たな知見が得られる可能性があります。

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