榎一雄

榎一雄

榎一雄（えのき かずお、1913年11月11日 - 1989年11月5日）は、日本の東洋史学者であり、東京大学名誉教授としてその名を広く知られています。彼は中央アジア史研究における卓越した業績で名高く、日本の東洋学研究に多大な貢献をしました。

生涯

1913年、兵庫県明石郡垂水村（現在の神戸市）に生まれた榎は、幼少期から学問に対する深い関心を示しました。神奈川県立横浜第三中学校を経て、第一高等学校を卒業後、東京帝国大学文学部東洋史学科に進学。恩師である白鳥庫吉の指導のもと、東洋史研究の道へと進みました。

戦後、1948年に東京大学文学部東洋史学科の助教授に就任し、1955年には教授に昇進。1974年に東京大学を定年退官後は、財団法人東洋文庫長および東洋文庫附置ユネスコ東アジア文化研究センター所長を兼任し、1985年からは東洋文庫理事長を務めました。東洋文庫の運営に深く関わり、敦煌文書、中近東現地語資料、イエズス会東アジア関係文書、モリソン関係資料など、貴重な資料の収集・充実に尽力しました。

研究内容と業績

榎一雄の研究は、中央アジア史を中心に、中国や日本との関係史にも及びます。特に、「邪馬台国」論争においては、師である白鳥庫吉と同じく北九州説を支持し、「伊都国」を起点とする「放射説」を提唱したことで知られています。この説は、当時の学界に大きな影響を与え、現在でも議論の対象となっています。

1977年には紫綬褒章、1985年には勲二等瑞宝章を受章。同年には、宮中における正月恒例の儀式である講書始において「シルクロード国際貿易史の特質」について進講するなど、その学術的業績は高く評価されました。

榎一雄文庫

没後の1990年、榎一雄の旧蔵書約3万冊が東洋文庫に寄贈され、「榎一雄文庫」として公開されました。この文庫は、中央アジア史研究における貴重な資料群として、現在も多くの研究者に利用されています。東洋文庫のオンライン検索や日本十進分類表新訂8版による分類検索を通じて、その内容に触れることができます。

著書

榎一雄は、数多くの著書や論文を発表し、その研究成果を広く社会に還元しました。代表的な著書としては、『邪馬台国』、『東洋文庫の六十年』、『東西文明の交流』、『シルクロードの歴史から』、『ヨーロッパとアジア』、『商人カルレッティ』などが挙げられます。これらの著書は、東洋史研究における重要な参考文献として、現在も読み継がれています。

人物

榎一雄は、温厚篤実な人柄で知られ、多くの門下生を育成しました。彼の指導を受けた学生たちは、現在、日本の東洋史学界を支える存在となっています。また、東洋文庫の運営に尽力し、貴重な資料の収集・保存に貢献するなど、学術界だけでなく、文化財の保護にも大きな功績を残しました。

外部リンク

榎 一雄 えのきかずお（1913-1989）経歴 ほか - 公益財団法人東洋文庫
東洋文庫所蔵 榎一雄文庫（オンライン検索）
榎一雄文庫 分類検索（日本十進分類表新訂8版）
20世紀日本人名事典『榎 一雄』 - コトバンク

榎一雄の業績は、日本の東洋史研究における重要な礎となり、彼の学術的遺産は、後世の研究者たちによって受け継がれています。

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