榎本虎彦

榎本虎彦について

榎本虎彦（えのもと とらひこ、1866年2月24日 - 1916年11月16日）は、明治・大正時代に活躍した著名な歌舞伎作家です。本業の傍ら、教師としても活動していた彼は、和歌山県出身で、俳号を破笠としました。彼は歌舞伎座の立作者として、代表作「南都炎上」や「名工柿右衛門」など、多くの作品を世に送り出しました。

来歴

榎本虎彦は、父の放蕩が原因で貧しい家庭に生まれました。自身の力で和歌山師範学校を卒業し、小学校教員となったものの、1887年、21歳のときに文学の道を志して上京しました。福地桜痴のもとで学びながら、日報社で記者としての経験を積む一方、桜痴が関与していた歌舞伎座で2年後には見習い作家として活動開始しました。その際、彼は竹柴破笠という名を名乗りました。

彼は新聞社で知り合った岡本綺堂と親交を結び、桜痴を介して綺堂を桜痴宅に連れて行くなど、文化交流にも努めました。その後、やまと新聞にて小説を書く時期もありましたが、1897年に再び歌舞伎作家の道に戻り、榎本虎彦の名を用いるようになりました。

1904年には、自身初の歌舞伎作品『安宅関』を発表しました。この作品は近松門左衛門の作品を基にしており、七代目市川八百蔵を想定して書かれました。同年、桜痴の死を機に、榎本は歌舞伎座の立作者に就任し、その後、翻案作品を中心に活動を続けました。

彼の手掛けた56本の作品の中で、1906年の『南都炎上』や、1912年11月に十一代目片岡仁左衛門のために書いた『名工柿右衛門』は特に重要な作品として位置づけられています。また、榎本は1897年、師である桜痴を助けて『侠客春雨傘』を歌舞伎に翻案し、これが劇場で大ヒットしました。桜痴はその序文で、榎本らに感謝の意を表していることからも、彼の作家としての才能が高く評価されていたことが分かります。

最後の作品 और 遺産

1916年、虎彦は二代目市川段四郎を念頭に置いた『新曲安達原』を発表し、これが彼の遺作となりました。同年に51歳で亡くなり、東京の深川に埋葬されましたが、後に祐天寺に改葬されました。彼の子孫としては、長男の茂や、映画監督の中村登が名を馳せています。また、孫の綾子は近代文学研究者の大石修平に嫁いでいます。

著作

榎本虎彦が残した著作には以下のような物が含まれます：

• - 『美人の犯罪 探偵小説』 (1893年)
• - 『黒眼鏡 探偵小説』 (1893年)
• - 『秋色桜 俳人外伝』 (1893年)
• - 『二人兵士』 (1895年)
• - 『桜痴居士と市川団十郎』 (1903年)
• - 他にも多くの作品を発表しました。

榎本虎彦はその短い生涯の中で、日本の歌舞伎に大きな影響を与え、現在でもその作品が愛され続けています。彼の創作した数々の名作は、後世に残る文化遺産としての地位を確立しました。

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