樋口修吉

樋口修吉：銀座とギャンブルを描いた作家

樋口修吉（ひぐち しゅうきち、1938年3月2日 - 2001年10月4日）は、日本の小説家です。本名は黄田康嗣（おうだ やすつぐ）。福岡県福岡市で生まれました。慶應義塾大学文学部哲学科および法学部法律学科を卒業しています。

生涯と作風

大学卒業後、樋口氏は三井物産に入社し、無機化学品の輸出を担当していました。11年間勤務した後、退職。その後、ヨーロッパや南米などを放浪し、作家活動を始めました。

商社マン時代に銀座界隈でギャンブルに明け暮れた経験から、銀座を舞台とした作品を多く発表しました。特にギャンブル小説の名手として知られ、安部譲二からは「真正都会無頼派」と称されました。

1981年、『ジェームス山の李蘭』で第36回小説現代新人賞を受賞。同作は第90回直木賞候補にも選ばれ、後に野沢尚の脚本で映画化もされています。

2001年、肺癌により63歳で亡くなりました。

作品の特徴

樋口修吉の作品は、銀座の華やかさと裏社会、そしてギャンブルに興じる人々の人間模様を巧みに描いている点が特徴です。商社マン時代の経験を生かした国際的な視点や、放浪生活で培った人間観察眼も、作品に深みを与えています。

主な作品

ジェームス山の李蘭: 1983年に講談社から出版された樋口氏の代表作。映画化もされています。
アバターの島: 1984年に講談社から出版。1994年には宝塚歌劇団によって『風に吹かれて』というタイトルでミュージカル化されました。
銀座ラプソディ: 銀座を舞台にした連作短編集。1987年に話の特集から出版されました。

その他の作品

樋口修吉は、小説以外にもエッセイやアンソロジーにも作品を寄せています。

小説

針路はディキシーランド (1988年)
本牧ララバイ (1988年)
回転木馬 (1989年)
舶来ギャンブル放浪記 (1990年)
選ぶのはヴィーナス (1991年)
銀座北ホテル (1993年)
たまゆらの女 (1994年)
銀座ミモザ館 (1994年)
たそがれトランプ (1995年)　のちにポーカー・ブルースに改題
花川戸へ (1995年)
贋 冬扇記 (1996年)
サンデーサイレンスの産駒 (1997年)
最後の恋文 ミオ・パトローノ (1997年)
縁かいな 始末屋清七 (2001年)

エッセイ・その他
国別・外人接待法 (1986年)
銀座一期一会 (1992年)
樋口修吉と10人の作家たちのシネマ倶楽部 (1995年)
老舗の履歴書I (1999年)
老舗の履歴書II (1999年)
東京老舗の履歴書 (2001年)

人物

樋口修吉は、小説家としての才能だけでなく、その人柄も多くの人に愛されました。デビューのきっかけとなった色川武大や、同期デビュー組である船戸与一、逢坂剛ら多くの作家と親交がありました。

評価

樋口修吉は、日本のギャンブル小説の分野において独自の地位を確立しました。彼の作品は、銀座の華やかさと裏社会を描き出し、多くの読者を魅了し続けています。

参考文献

各作品の解説
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