樋口芳麻呂

樋口芳麻呂：中古・中世和歌文学研究の第一人者

樋口芳麻呂(1921年9月15日-2011年10月1日)は、日本の国文学に多大な貢献をした著名な学者です。専門は中古・中世和歌文学であり、その深い知識と鋭い洞察力は、後世の研究者たちに大きな影響を与えました。

愛知県名古屋市に生まれた樋口は、旧制愛知県明倫中学校、旧制第八高等学校を経て、1944年に東京帝国大学文学部国文学科を卒業しました。その後、愛知学芸大学講師、愛知教育大学教授を歴任し、1985年には愛知教育大学を定年退官、名誉教授となりました。さらに、愛知淑徳大学文学部教授に就任し、1997年に同大学を定年退職、名誉教授となりました。

樋口の研究活動は非常に多岐に渡り、数多くの重要な業績を残しています。特に、平安時代から鎌倉時代にかけての散逸物語や秀歌撰に関する研究は高く評価され、1983年には『平安・鎌倉時代散逸物語の研究』により角川源義賞を受賞しました。この受賞は、彼の研究の質の高さを示す重要な証です。

その業績は単なる研究論文の執筆にとどまりません。樋口は多くの古典文学作品を編纂、校訂し、現代の読者にも理解しやすい形で古典文学を紹介することに尽力しました。代表的なものとして、『定家八代抄と研究』、『未刊中世歌合集』、『新勅撰和歌集』、『王朝物語秀歌選』など、数々の古典文学作品を世に送り出しました。これらの仕事は、古典文学研究における基礎資料として、現在も広く活用されています。

また、樋口は後進の育成にも力を注ぎました。大学教授として多くの学生を指導し、彼らに古典文学の魅力を伝えました。彼の教えを受けた学生たちは、現在も日本の国文学研究の第一線で活躍しています。

学術研究への貢献に加え、樋口は1997年に旭日中綬章を受章しました。これは、彼の研究活動と教育活動への功績が国家によって高く評価された証です。

樋口芳麻呂が残した功績は、日本の国文学研究に計り知れないほどの影響を与えました。彼の研究成果は、現代の研究者たちにとって貴重な財産であり、これからも多くの研究者によって引き継がれ、発展していくでしょう。彼の没後も、樋口芳麻呂という名は、日本の国文学研究史に永遠に刻み込まれることでしょう。

主な著書・編著書

『平安・鎌倉時代散逸物語の研究』 (ひたく書房, 1982)
『平安・鎌倉時代秀歌撰の研究』(ひたく書房, 1983)
『後鳥羽院 我こそは、にい島守よ（王朝の歌人）』 (集英社, 1985)
『王朝の女流作家たち』(久保朝孝、鷹尾純、岩下紀之共著、世界思想社, 1990)
『王朝和歌と史的展開』(編、笠間書院, 1997)
『定家八代抄と研究』(未刊国文資料刊行会, 1956-1957)
『未刊中世歌合集』(谷山茂共編、古典文庫, 1959)
『未刊中古私家集』(谷山茂共編、古典文庫, 1961-1963)
『新勅撰和歌集』(久曽神昇共編、岩波文庫, 1961)
『楢葉和歌集と研究』(未刊国文資料刊行会, 1961)
『物語和歌総覧 索引編』(久曽神昇、藤井隆共編、風間書房, 1976)
『金槐和歌集』(源実朝、新潮日本古典集成, 1981)
『王朝秀歌選』(岩波文庫, 1983)
『日本歌学大系』第10巻(総索引) (久曽神昇共編、風間書房, 1986)
『王朝物語秀歌選』(岩波文庫, 1987-1989)
『中世和歌集 鎌倉篇』(新日本古典文学大系、岩波書店, 1991)
『定家八代抄 続王朝秀歌選』(藤原定家、後藤重郎共編、岩波文庫, 1996)
『松浦宮物語』(新編日本古典文学全集、小学館, 1999)
『隆信集全釈』(風間書房, 2001)
『百人一首』(尭孝、笠間書院, 2005)

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