標準数

標準数とは

標準数（ひょうじゅんすう、Preferred number）とは、機器の寸法や抵抗値などを決定する際に用いられる数値の体系です。これは、等比数列（隣り合う数値の比が一定）を丸めたもので、工業製品の設計や製造において、合理的な数値の選択を可能にするための基準として活用されています。

標準数の歴史

標準数の概念は、1877年から1879年頃に、フランスの軍人であったシャルル・ルナールによって提唱されたのが始まりとされています。彼は、気球に使用される多種多様なロープの太さを整理しようとした際に、この概念を考案しました。そのため、標準数は「ルナール数」とも呼ばれています。

例えば、4mmのロープ径では強度が不足する場合、1mmだけ太くした5mmのロープが一般的に好まれます。しかし、40mmのロープでは、1mm太くしても実用上大きな違いはありません。この場合、40mmよりも10mm太い50mmのロープを使用する方が、より実用的であることが経験的にわかります。このように、標準数は等比数列に基づいて数値を決定することで、段階的なサイズアップやダウンを効率的に行うことを目的としています。

また、標準数の一つの特徴として、先頭の数字が1や2である数値が多く、8や9である数値が少ない傾向があります。この分布については、ベンフォードの法則に関連する現象として説明されています。

JIS規格における標準数

標準数に関する規格は、日本においてはJIS（日本産業規格）によって定められています。主に以下の規格で標準数が用いられています。

JIS Z 8601: 製品の寸法を決定するための基準値として、R5、R10、R20、R40、R80の各系列が定められています。これらの数値は、ISO 3（国際標準化機構）の規格に基づいています。

JIS C 60063: 抵抗器やコンデンサなどの受動素子の値を決定するために、E3、E6、E12、E24、E48、E96、E192の各系列が定められています。これは、国際電気標準会議（IEC）の規格に基づいたものです。

JIS B 0601: 製品の表面粗さの指示値として用いられる標準値です。

JIS Z 8601の標準数系列

JIS Z 8601では、以下のR系列が定義されています。

R5系列: 公比が約1.585（5√10）の等比数列を丸めた数値系列
R10系列: 公比が約1.259（10√10）の等比数列を丸めた数値系列
R20系列: 公比が約1.122（20√10）の等比数列を丸めた数値系列
R40系列: 公比が約1.059（40√10）の等比数列を丸めた数値系列
R80系列: 公比が約1.029（80√10）の等比数列を丸めた数値系列

これらの系列は、数値の粗密を調整するために使い分けられます。

JIS C 60063の標準数列（E系列）

JIS C 60063では、受動素子の値の標準として、以下のE系列が定義されています。

E3系列: 公比が約2.154（3√10）の等比数列を丸めた数値系列
E6系列: 公比が約1.468（6√10）の等比数列を丸めた数値系列
E12系列: 公比が約1.211（12√10）の等比数列を丸めた数値系列
E24系列: 公比が約1.100（24√10）の等比数列を丸めた数値系列
E48系列: 公比が約1.050（48√10）の等比数列を丸めた数値系列
E96系列: 公比が約1.025（96√10）の等比数列を丸めた数値系列
E192系列: 公比が約1.012（192√10）の等比数列を丸めた数値系列

E系列の数値は対数目盛上でほぼ等間隔に配置されます。また、系列の数（E）と公比の関係は以下の式で表されます。

`公比 = 10^(1/E)`

E3、E6、E12、E24系列では有効数字は2桁、E48、E96、E192系列では有効数字は3桁となります。

各系列の具体的な数値例

各系列の具体的な数値例については、それぞれのJIS規格を参照してください。

標準数の利用

標準数は、設計者が効率的に製品を設計し、製造コストを削減する上で重要な役割を果たしています。特に、部品の選択や寸法の決定において、無駄を省き、合理的な設計を支援するツールとして広く利用されています。

関連事項

音階: 音階も等比数列に基づく概念の一つです。
* 白銀比: 美しいとされる比率の一つです。

標準数は、私たちの身の回りの様々な製品の設計に活用されており、合理的な数値選択を支える重要な概念です。

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