標的制御注入

標的制御注入 (TCI) の概要

標的制御注入（Target Controlled Infusion, TCI）は、薬物の効果部位濃度をユーザーが設定し、その濃度に基づいて静脈内で薬剤を自動的に注入する方法です。この技術は日本で臨床導入されてから20年以上が経過し、主に全静脈麻酔において頻繁に使用されています。クイックかつ正確な薬剤の調整を可能にし、医療現場において広く支持されています。

TCIの特徴は、マイクロコンピュータを内蔵したシリンジポンプを利用することです。このポンプは、設定された薬物濃度に達するための注入速度を自動で調整し、患者の反応に応じて効果部位濃度を変化させます。患者の反応は血圧や心拍数、脳波などで観察され、それに基づいて投与量が調整されます。これにより、より安全で効率的な薬物投与が実現されます。

また、TCIは麻酔薬のみならず非脱分極性筋弛緩薬にも適用されるため、用途は多岐にわたります。特に静脈麻酔薬の場合、効果部位は原則として脳であるため、その濃度を設定しやすいという利点があります。ただし、実際の脳内濃度をリアルタイムで測定することはほぼ不可能なため、効果部位濃度はあくまで仮想的なものとなります。

TCIの種類と分類

TCIは、標的に基づいて分類されます。例えば、接尾辞「e」は効果部位、一般的に中枢神経系や脳を示し、接尾辞「p」は血漿を示します。このような分類は、効果部位の平衡化にかかる時間などに影響を与えます。また、TCIの臨床的安全性は多くの研究により実証されています。現在日本で用いられているテルフュージョンシリンジポンプSS型3TCIは、TCIpとして知られ、新たに効果部位濃度を表示する機能も持っています。

TCIの歴史

標的制御注入の歴史は1988年に始まります。スティーブン・シェイファーがIBM-PCで動作するTCIプログラム「Stanpump」を開発し、これによりシリンジポンプを制御できるようになりました。その後の数年間で、日本静脈麻酔・Infusion Technology研究会が設立され、1996年にはプロポフォールとともに臨床現場で使用されるようになりました。2001年にはテルモ社が日本で初のTCIポンプを発売し、その後もTCI技術は進化を続けています。

TCIの薬剤

TCIで用いられる主な薬剤には、プロポフォールや合成オピオイドのレミフェンタニルなどがあります。これらの薬剤の投与には、薬物動態学に基づいたモデルが使用され、注入装置に組み込まれたソフトウェアで自動調整が行われています。プロポフォールにはMarshモデルやSchniderモデル、レミフェンタニルにはMintoモデルが一般的に利用されています。

結論

TCIは手動投与と同じくらい安全で効果的であるとされ、麻酔科における重要な技術です。日本ではプロポフォールのTCIが普及しており、今後さらなる進展が期待されます。TCIの導入により、安全で質の高い麻酔管理が実現されているのです。

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