樟脳と台湾

樟脳と台湾の歴史

台湾における樟脳（クスノキから得られる樟脳）は、特に清代から日本統治時代にかけて台湾の経済に重要な役割を果たしました。樟樹の栽培や樟脳の製造は、台湾の山林産業の中でも重要な位置を占めており、当初は生薬や防腐剤として利用されていました。しかし、19世紀に入るとセルロイド（人工象牙）の発見が助けとなり、樟脳は工業原料として世界的な注目を集める存在へと変わっていきました。

清国統治時代の樟脳の流通

1858年、天津条約によって台湾の台南・安平港や基隆港が外国に開放されると、イギリスの商人たちが樟脳の輸出を支配するようになります。ジャーディン・マセソン商会やデント商会は清国官吏と手を組み、大きな利益を上げていました。清国政府は樟脳の輸出を官業独占にする試みを行いましたが、外国商人たちの反対によって実現しませんでした。彼らの優位性は揺るぎないものでした。

日本政府の樟脳専売制度の導入

1895年に台湾が日本に割譲されると、日本政府は樟脳の外国商人による独占を排除しようとしました。1895年には樟脳製造取締規則を制定し、翌1896年には樟脳税制を導入しましたが、外国商人からの強い抗議を受け、思うようにはいきませんでした。1899年には樟脳専売制度が施行され、台湾樟脳局が設立されることで、樟脳の商権はようやく外国商人の手から政府に移りました。しかし、輸出は依然として外国資本が多くを占めていました。

樟脳が台湾財政に与えた影響

樟脳は台湾の特産品としてだけではなく、総督府の財政安定にも寄与しました。日本統治の初期、台湾の財政は日本政府の多額の補助なしには成り立たず、1896年には歳入965万円のうち694万円が国庫補助によるものでした。1899年からの樟脳の専売制度によって、台湾財政は自立への道を歩むことができました。収入の平均額は385万円で、総督府の歳入の19%を占めるまでに成長したのです。

福建省との関係

台湾産の樟脳は福建省にも影響を及ぼしました。1901年、台湾名望家の林朝棠が清国の当局から樟脳の専売権を取得する試みは、資金難によって日本政府の援助を必要とするものでした。日本側はこれを見逃さず、福建省の樟脳も掌握する方針を取ります。しかし、この取り組みは外部から反発を受け、最終的には1910年に専売が停止されることとなります。

先住民族と樟脳採取の関係

樟脳の需要が高まるにつれ、クスノキの採取が難しくなり、原木採取の要請が増加しました。日本政府は第5代台湾総督の下で先住民族に対する軍事制圧を行い、高山での樟脳採取を容易にするための政策を展開しました。この過程で、複数の反乱が発生し、先住民族の生活圏が狭められる結果となりました。

結論

樟脳は台湾の経済的発展と、様々な歴史的変遷の中で重要な役割を果たしました。日本の統治下においてもその商業的価値は高まり、台湾の財政や社会構造に多大な影響を与えたのです。樟脳を巡る台湾の歴史は、台湾が直面した政治的・経済的変動を反映したものとも言えます。

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