権藤成卿

権藤成卿について

権藤成卿（1868年4月13日 - 1937年7月9日）は日本における農本主義思想の先駆者であり、制度学者としても広く知られる人物です。本名は善太郎、号には成卿や間々道人などがあり、彼の思想は明治時代から昭和にかけての日本社会に深い影響を与えました。

生い立ちと家系

権藤家は代々藩医として名を馳せ、曾祖父や祖父の時代から続く医療の家系でした。特に祖父の権藤延陵は筑後の三秀才として名高く、儒者としても知られ、多くの学者たちと交流を持っていました。父の権藤直もまた活発な活動を行い、若き日から政治的活動に関わっていました。権藤成卿は福岡県三井郡山川村に生まれ、幼少期から様々な学問に触れる環境で育ちました。

幼少期から青年期

義務教育を受けた後、商人としての経験を経て、家庭の古文書や漢籍を読むことで漢学の素養を身に着けました。1866年には中国に旅行し、1890年代には日韓問題に関心を持つようになりました。彼の結婚や家庭の変遷を経て、独立した学問への探求が始まります。

政治活動と思想形成

成卿は、明治政府に対する批判から政治活動を開始し、農本主義的な立場を確立しました。特に「社稷国家」の概念は、古代中国の封建制を理想とし、共同体としての自治を重視するものでした。彼は、都市・資本主義への反発から、農村の持つ自治的な特性を大切にし、農民の自立を訴えました。

自治学会と農本主義の理論

1914年には自治学会を設立し、共同体運動が広がる中で、権藤は「社稷自治論」を提唱しました。彼の考えでは、社会は土から成り立ち、民衆の相互扶助が重要であるとされ、古代の郷村社会の自治を理想としました。また、彼は大同の思想を通じて平等な社会の実現を訴え、権力や所有のあり方に対する批判を展開しました。

農本主義と昭和維新

1930年代に入ると、世界恐慌の影響により、日本の農村も窮地に立たされました。このような環境下で、権藤は「日本村治派同盟」を結成し、農本主義者としての共同戦線を強め、自治的な社会の確立を目指しました。特に、彼の著作『日本農制史談』や『君民共治論』はその思想を具現化した重要な作品として位置づけられています。

国家資本主義批判

権藤は、国家資本主義やファシズムに対して強い批判を展開しました。彼の見解では、官僚による統制や資本家の保護は、民衆の権利を損なうものであり、すべての国民が共存できる社会が理想でありました。彼は、自らの思想を通じて社会の変革を訴え続けました。

最後の日々と評価

権藤成卿は1937年に死去しましたが、彼の思想は後世に多大な影響を与え続けています。特に、共同体による自治や農本主義の重要性を説いた点は、今なお評価されることが多いです。彼の著作や理論は、アナキズムや社会契約論といった異なる思想との共鳴を持ちつつ、独自の哲学を形成しています。彼の生涯と思想は、日本の農村社会や自治の研究において欠かせない存在です。

もう一度検索