横川吸虫

横川吸虫について

横川吸虫（よこがわきゅうちゅう、学名: Metagonimus yokogawai）は、扁形動物の一種で、人体に寄生する小さな虫です。この寄生虫は主に小腸に住み着き、和名は台湾のアユから検出した医学者、横川定に由来しています。成虫は体長が1から1.5mmと小型で、形状はほぼ楕円形です。さらに、雌雄同体という特性を持っています。

分布状況

横川吸虫は極東地域に広く分布していますが、日本国内では最近その数が減少している傾向があります。それでもなお、日本での感染報告数ではアニサキスに次いで第2位となっています。特に、アユやシラウオなどの淡水魚が中間宿主となることから、アユ漁の盛んな島根県高津川流域や、シラウオ漁が行われている茨城県霞ヶ浦周辺に住む人々に感染が見られています。

生活史

横川吸虫の生活史は非常に複雑です。人間の糞便中に虫卵が放出されると、虫卵の中には既にミラキジウム（孵化寸前の幼虫）が入っています。ただし、虫卵は外界では孵化せず、まず淡水産の巻貝であるカワニナに食べられることで孵化を始めます。その後、ミラキジウムはカワニナの体内で変化し、スポロキストとなります。この段階では、体内に胚細胞が元気に分裂し続け、最終的にはケルカリア幼生に成長します。

ケルカリア幼生はカワニナの体表を破って水中に出た後、淡水魚に寄生します。国内の淡水魚、具体的にはアユやシラウオの体内でもその後、メタケルカリア幼生に変化し、最終的に人がそれらの魚を摂取することによって、腸内で成虫へと成長します。

宿主について

横川吸虫には決まった宿主があります。第1中間宿主はカワニナであり、第2中間宿主はアユ、シラウオ、ウグイ、フナ、コイなどの淡水魚です。そして、最終的な宿主には人間、犬、猫、豚、さらにはサギやカワウなども含まれます。

症状

横川吸虫に感染した場合、感染者の多くは自覚症状がほとんどありません。少数感染の場合、若干の下痢がみられることがあるものの、自覚がないケースが一般的です。一方で、多数感染すると、腹痛や下痢の症状が明らかになることが多く、慢性カタル性腸炎を引き起こす原因とされています。また、小腸の絨毛に広がることが慢性炎症につながる可能性があるとも言われています。

予防方法

感染予防策としては、アユやシラウオを生で食べないことが最も重要です。特に、アユの刺身やシラウオの握り寿司は人気ですが、少数の感染でも重大な症状が発生することは稀です。そのため、感染予防の意識が高まることは少ないのが実情です。同時に、調理時の注意も必要で、生焼けのアユからメタケルカリア幼生が残留していることがあるため、注意が求められています。

治療法

横川吸虫症の治療は、早朝の空腹時にプラジカンテルを投与し、その後下剤を用いて虫を排出する方法が効果的です。これにより、感染した虫を効率的に取り除くことが可能です。

このように横川吸虫は私たちの身近に存在している寄生虫であり、その感染可能性を意識し、適切な対策を講じることが重要です。

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