横廠式ホ号乙型試作水上機

横廠式ホ号乙型試作水上機

横廠式ホ号乙型試作水上機は、大日本帝国海軍によって開発された水上機で、1916年（大正5年）に初めて試作されました。この機体は、偵察機及び爆撃機としての使用が想定されており、高い滞空性能を持つ実験機として位置付けられていました。開発は横須賀海軍工廠の造兵部飛行機工場で行われ、当時の航空技術の進展に寄与する重要な存在でした。

機体の命名は1918年6月に行われ、設計には中島知久平機関大尉が主に関与し、馬越喜七中尉の協力を受けています。この水上機は、以前に中島らが設計した横廠式中島トラクター試作水上機の系譜を受け継いだ木製骨組みに、布を貼った複葉機の構造を持っていました。運用のための降着装置は双フロートで、エンジンにはサルムソン2M-7を搭載しています。このエンジンにより、機体は信頼性と安定した飛行が可能となりました。

さらに、1919年から1920年にかけて、エンジンはプジョーV-8水冷V型8気筒（最大230 hp）に改良され、性能向上が図られた改良型が2機製造されています。これにより、機体の飛行性能は向上し、より実用に近い形になったものの、いくつかの理由から量産には至りませんでした。

当時の日本においては、飛行機を運用するための作戦部隊が存在せず、量産する必要性が薄かったため、横廠式ホ号乙型試作水上機は、研究機としての役割に留まることになりました。実際の性能は1916年に輸入されたショート184と同等であり、その技術的な完成度は高かったことが伺えます。

諸元

• - 全長: 9.60 m
• - 全幅: 21.00 m
• - 全高: 4.122 m
• - エンジン: サルムソン2M-7 水冷星型7気筒（公称200 hp）×1
• - 最大速度: 96 km/h
• - 航続時間: 11.7時間
• - 武装: 爆弾を搭載可能
• - 乗員: 2名

横廠式ホ号乙型試作水上機は、当時の航空機設計の進化を象徴する機体として、その歴史的な重要性を持っています。日本の航空機技術の基盤を築く上で、無視できない位置づけを果たしています。参考文献としては、野沢正氏の著作『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』が挙げられ、詳細な情報が記載されています。

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