横廠式中島トラクター試作水上機

横廠式中島トラクター試作水上機について

横廠式中島トラクター試作水上機（よこしょうしきなかじまトラクターしさくすいじょうき）は、大日本帝国海軍が試作した水上機です。これは、日本の航空機技術の発展を示す重要なプロジェクトの一部として位置づけられています。

概要

1914年、大日本帝国海軍の横須賀海軍工廠は国産の牽引式水上機の開発に着手しました。この試みは、日本海軍式水上機の後を受ける形で行われ、当時の航空技術の先進性を反映したものでした。このプロジェクトの設計主務者には中島知久平機関大尉が任命され、1915年の2月には試作一号機が完成しました。

試作一号機の初めての飛行試験では、井上二男大尉がパイロットとして機体を操縦しましたが、離水後約5メートルの高度に達したところで姿勢を崩し、墜落して大破する結果となりました。この失敗を受けて、さらに改良された二号機が1915年の9月に製作され、試験が続けられました。

その後、1916年の6月にエンジンを変更した三号機も製作されましたが、他国の技術を取り入れたフランス製の水上機を改良したモ式ロ号乙型水上機の方が実用性に優れていたため、結局は横廠式中島トラクター水上機は試作段階で終了することとなります。

設計と構造

本機は木製の骨組みに羽布張りの複葉機という構造を持ち、双フロートを装備しています。この設計にはファルマン式およびドゥペルデュサン式の技術が参考にされており、当時の航空機設計の流行を反映したものとなっています。初期の一号機および二号機には、ベンツ製のF-Dエンジンが搭載されていましたが、後の三号機ではサルムソン製の160馬力エンジンに変更されています。

諸元

試作機の具体的な諸元は以下の通りです。

• - 全長: 9.00 m
• - 全幅: 19.00 m
• - 全高: 4.00 m
• - 主翼面積: 69.0 m²
• - エンジン: ベンツ F-D 水冷直列6気筒（最大115 hp） × 1
• - 最大速度: 100 km/h
• - 乗員: 2名

このプロジェクトは、国産水上機の開発における試みの一環として、大日本帝国海軍の航空機技術の進展を図ったものの一つでありますが、最終的には実用化されることなく歴史の中に埋もれていったと言えるでしょう。

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』 出版協同社、1959年、119・120頁。

もう一度検索