横歩取り4四角

横歩取り4四角：歴史と現代の評価

横歩取り4四角は、後手番が用いる横歩取り戦法の一種です。△2八歩▲同銀△4五角という定跡の一変型として、△3八歩▲同銀△4四角と角を配置する点が特徴です。江戸時代から存在する古くから知られる指し方ですが、プロの公式戦ではあまり見られないため、アマチュアの間で主に研究されています。

プロ棋士による分析：様々な視点

『イメージと読みの将棋観』（2008年、日本将棋連盟）によると、この変化は従来の定跡書ではほとんど取り上げられていません。1998年以降の公式戦ではわずかに3局しか指されておらず、先手勝率は2勝1敗です。後手勝利の唯一の例は、1999年の早指し選手権予選、佐藤義則対豊川孝弘戦で、△3八歩▲同銀△4四角からの複雑な展開を経て後手が勝利を収めました。

この戦法の成否を巡り、多くのプロ棋士が様々な角度から分析しています。

羽生善治 は、先手の応手として▲8七歩、▲7七桂、▲7七角の3パターンを検討。それぞれに複雑な変化を想定し、先手有利と判断する局面もあれば、後手有利と判断する局面もあると分析しています。
佐藤康光 は、▲8七歩、▲7七桂、▲7七角について、後手有利と判断する局面が多く、特に▲7七桂は後手が負けるイメージがないと述べています。
森内俊之 は、▲8七歩は先手悪くないとしながらも、勝ちに行くなら▲7七角で、やや後手が不利な展開になると指摘しています。
谷川浩司 は、▲8七歩以下の展開では先手が優位に立ち、▲7七角の展開も先手有利と評価しています。
渡辺明 は、▲7七角に△8七飛成や△9九とが有効だとしつつも、プロなら先手勝率が高く、アマチュアならば後手勝率が高くなると予想しています。
藤井猛 は、▲8七歩からの展開では先手が有利だと分析。さらに、横歩取りは歴史が古く、新しい未知の戦術が隠されているとは考えにくいと述べています。

△3八歩の有効性：議論の的

『イメージと読みの棋士観』では、そもそも△3八歩が有効かどうかが検討されています。これは、この変化の成立条件と深く関わっている重要な問題です。

仮に▲3八同銀に△2八歩とした場合、▲2四飛△3三角▲2一飛成という変化が有力視されています。これは、後手が角交換で攻め込む展開ですが、先手も桂取りから一気に出世を狙うなど、激しい攻防が予想されます。

文献

この戦法に関する研究は、以下の文献に詳しく記述されています。

沢田多喜男、『横歩取りは生きている―大橋柳雪から現代まで』
所司和晴、『横歩取りガイド』、『横歩取りガイドⅡ』、『横歩取り道場〈第3巻〉4五角戦法 (東大将棋ブックス)』
羽生善治、『羽生の頭脳〈9〉激戦!横歩取り』、『羽生の頭脳10―最新の横歩取り戦法』
勝又清和、『消えた戦法の謎』

まとめ

横歩取り4四角は、プロでは稀にしか見られない戦法ですが、アマチュアの間では古くから研究されています。その成否は、△3八歩の有効性や、後手の攻めと先手の受けのバランスに左右される複雑な局面です。プロ棋士の分析からも、その難解さが伺えます。アマチュア棋士は、それぞれのプロ棋士の意見を参考に、自身の将棋に活かしていくことが重要でしょう。

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