横浜の都市デザイン

横浜の都市デザイン：多様な価値観を統合した都市空間形成

横浜市の都市デザインは、1960年代後半、飛鳥田一雄市長在任中に「横浜市六大事業」の一環として始まりました。戦後の復興と高度経済成長期の都市問題への対応、そして自立的な都市構築を目指す戦略として位置づけられ、現在まで発展を続けています。

都市デザインの目標と方針

横浜の都市デザインは、機能性や経済性といった従来の価値観に加え、美しさ、楽しさ、潤いといった美的価値や人間的価値を重視し、両者のバランスを追求することで、特徴的で魅力ある都市空間の形成を目指しました。

具体的な目標としては、歩行者空間の安全と快適性の確保、人と人との交流促進、街の美観向上、自然環境の保全、水辺空間の活用、歴史・文化資源の継承などが掲げられています。これらの価値観は、都市デザイン活動開始当初は社会的に弱い立場にありましたが、現在では市民からの支持も厚く、多くの自治体の街づくり目標として広く共有されています。

都市デザインの取り組み

横浜市は、都市デザインを以下の様な手法で実践してきました。

都市構想のデザイン: 魅力的な将来像と実現プロセスを示す。
企画的都市デザイン: 都市づくりの事業企画・立案段階から参画する。
調整的都市デザイン: 関係者間の調整を行い、地域の特徴を活かした空間づくりを推進する。
誘導的都市デザイン: まちづくりの質的向上を目指す誘導ルールを確立し、活用する。
地域マネジメント主体の育成・支援: 地域主体のまちづくりを推進する組織の育成と支援を行う。
デザイン開発: 都市デザインの視点から公共施設などのデザインを開発する。
* 研究とPR: 都市デザインの理解促進と更なる充実を図る。

主要プロジェクト

横浜の都市デザインは、都心部の再生、みなとみらい21地区開発、都市軸の整備など、数多くのプロジェクトで実践されています。

都心部では、横浜駅周辺と関内地区の一体化を目指した事業が進められ、歩行者空間の整備、歴史的建造物の活用、街全体の美観向上などが図られました。「くすのき広場」は、初期の都市デザインの成功例として知られています。

みなとみらい21地区では、マスタープランに基づいた大規模開発が行われ、ランドマークタワーや赤レンガ倉庫など、ランドマーク的な建築物が誕生しました。ペデストリアンネットワークの構築により、海と街が一体となった魅力的な空間が創出されています。

都市軸の整備では、ウォーターフロントと緑の軸線を形成し、海の風景と緑を活かした都市空間の創出を目指しました。特に、高速道路の地下化による緑の軸線の確保は、都市デザインの視点と行政の強い意志が結実した事例と言えます。

その他、大通り公園、横浜公園、日本大通り、山下公園、象の鼻パークなどの整備も、都市デザインの理念に基づいて行われました。

既成市街地の都市デザイン

既成市街地においては、関内地区を皮切りに、歩行者空間の整備、地域独自の街づくり協定などを活用した地域主体のまちづくりが展開されました。行政と地域住民が協力し、協議や実験を通して具体的な成果を積み重ねることで、市民の理解と協力を得ながら事業を進めてきました。

郊外住宅地の都市デザイン

港北ニュータウンや金沢シーサイドタウンといった郊外住宅地においても、都市デザインの考え方が取り入れられました。金沢シーサイドタウンでは、住宅地の約12％を緑地として確保するなど、自然環境との調和を重視した計画が実施されました。また、歩行者空間の整備、多様な住宅タイプの提供、公共施設のデザインなど、様々な工夫が凝らされています。

歴史を生かしたまちづくり

横浜の歴史的建造物や景観を保全・活用する取り組みも、都市デザイン活動の重要な柱となっています。1988年に「歴史を生かしたまちづくり要綱」を制定し、歴史的建造物の登録・認定、保全活用計画の策定、助成制度の導入など、多様な施策を実施することで、歴史的建造物の保全と活用の両立を目指しています。

都市デザインの仕組みづくり

横浜市は、都市デザイン活動を効果的に推進するため、様々な仕組みを構築してきました。市街地環境設計制度、景観条例、歴史を生かしたまちづくり要綱などがその例です。これらの制度を活用することで、建築物の高さや容積率の緩和、歴史的建造物の保全・活用などが促進されています。

都市デザインの交流・発信

横浜市は、国際会議や展示会、コンペなどを通して、都市デザインに関する情報交換や発信を積極的に行ってきました。これらの活動は、市民の都市デザインへの理解を深め、国際的な都市交流を促進することに貢献しています。

まとめ

横浜市の都市デザインは、戦後復興から現在に至るまで、時代の変化に対応しながら、多様な価値観を統合した都市空間形成を目指し、発展を続けてきました。市民参加、国際交流、独自の制度設計など、横浜ならではの都市デザイン手法は、他の都市にとっても貴重なモデルケースとなっています。今後も、持続可能な都市の創造に向けて、更なる進化が期待されます。

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