横浜宝塚劇場

横浜宝塚劇場の歴史と変遷

横浜宝塚劇場は、かつて横浜の馬車道に存在した劇場で、映画上映や宝塚歌劇団の公演が行われ、多くの人々に親しまれていました。現在、その跡地には関内ホールが建てられています。

誕生と初期の活動

実業家・小林一三は、宝塚大劇場と東京宝塚劇場での成功を受け、全国主要都市での劇場展開を計画しました。その先駆けとして、1934年10月に横浜市住吉町4丁目の馬車道に面した土地を購入し、清水組（現 清水建設）の施工により建設に着手しました。1935年3月に完成した劇場は、鉄筋コンクリート構造3階建てで、建坪410坪、延床面積830坪、客席定員は1440人を誇りました。

当初の計画では「宝塚横浜映画劇場」という名称でしたが、着工時に「東宝会館」に変更され、開館時には「横浜宝塚劇場」と改められました。地元の人々からは「横宝（よこほう）」の愛称で親しまれました。

1935年4月1日の開館記念公演では、アメリカ映画『キャラバン』と日本映画『女優と詩人』の二本立てが上映されました。同年5月には、横浜初の宝塚歌劇団公演として、星組による舞踊やオペレッタが上演され、その後も新国劇や歌舞伎など、多彩な演目が提供されました。

戦時下の苦難と戦後の再開

1937年に日中戦争が開戦すると、公演内容も時局を反映し、軍事劇が中心となりました。しかし、柳家金語楼によるユーモラスな作品も上演され、非常時の中にも笑いを提供しました。1938年には、東宝新興劇の「お化け大会」が空前の大入りとなり、連日多くの観客が訪れました。1939年7月の興行成績では、入場人員と収入で横浜の主要劇場の中でも上位に位置していました。

1942年には、映画配給が一元化され、横浜宝塚劇場は紅系の封切り館として位置づけられました。終戦時には劇場も被害を受けましたが、比較的早く再開し、笠置シヅ子のショーや三遊亭金馬の落語などが上演され、市民に笑顔をもたらしました。

洋画専門館への転換と閉館、そして現在

1953年8月には、ショーの実演を終了し、洋画専門館へと転換しました。その後、関内地区の接収が解除されると、東宝はアミューズメントセンター建設構想を発表し、1956年には横浜東宝会館が開館しました。しかし、テレビの普及などによる観客の減少により、1969年9月に横浜宝塚劇場は閉館しました。

閉館後、横浜市が劇場を買い取り、「横浜市民ホール」として再開しましたが、老朽化のため、隣接する旧中区役所の敷地と合わせて、横浜市市民文化会館関内ホールとして建て替えられました。現在、関内ホールは、横浜の文化拠点として、様々なイベントや公演が行われています。

劇場発行の逐次刊行物

横浜宝塚劇場では、以下の3種類の逐次刊行物を発行していました。

横浜宝塚劇場ニュース: プログラムに相当するリーフレット形式の刊行物。
横宝フォア・キャスト: 上映映画の批評を掲載したリーフレット形式の刊行物。
* 横宝レポート: 上映映画・演劇の紹介や読者投稿欄を設けた刊行物。劇場と観客の交流の場となっていました。

横浜宝塚劇場は、その短い歴史の中で、横浜の文化に大きな影響を与えました。劇場は姿を変えましたが、その精神は関内ホールに受け継がれ、今も横浜の街に息づいています。

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