樺太青年師範学校

樺太青年師範学校の歴史

樺太青年師範学校（からふとせいねんしはんがっこう）は、太平洋戦争末期の1944年（昭和19年）、当時の樺太の中心都市であった豊原市（現在のロシア連邦ユジノサハリンスク）に設立された青年師範学校です。この学校は、中等教育機関としての青年学校で指導にあたる教員を養成することを目的としていました。

設立前史

樺太青年師範学校の起源は、その設立に先立つ1941年（昭和16年）4月15日に遡ります。この日、樺太庁師範学校の官制が一部改正され、樺太庁師範学校に附設（併設）される形で「樺太庁師範学校附設青年学校教員養成所」が設置されました。これは、増大する青年学校教育の需要に応えるため、専任教員の育成が急務となった時代背景を反映した動きでした。

その後、師範教育制度全体の改編が行われた1943年（昭和18年）4月14日には、師範教育令の全面的な改正に伴い、樺太庁諸学校官制も改正され、その名称を「樺太師範学校附設青年学校教員養成所」と改めました。

青年師範学校としての歩み

そして1944年（昭和19年）4月1日、師範教育令が再度一部改正されたことを受け、前身である教員養成所は樺太庁立の「樺太青年師範学校」へと改組・昇格を果たしました。これにより、青年学校教員養成機能はより独立した専門教育機関としての形を整えましたが、組織上は引き続き樺太師範学校に附設される形態が維持されました。

終戦による閉鎖

太平洋戦争の戦局が最終局面を迎える1945年（昭和20年）、樺太の歴史に大きな転換点が訪れます。まず同年4月1日には、樺太が正式に日本の内地に編入される措置が取られました。これに伴い、樺太に存在した高等教育機関、すなわち樺太医学専門学校、樺太師範学校、そして樺太青年師範学校は、所管が樺太庁から文部省へと移管され、内地と同等の扱いを受けることになりました。

しかし、この文部省移管からわずか数ヶ月後、日本の運命は決定的な局面を迎えます。同年8月11日以降、ソ連が対日参戦し、樺太に侵攻を開始しました。この戦火の中で、樺太青年師範学校は教育活動の継続が不可能となり、停止を余儀なくされました。ソ連軍による占領後、南樺太に樹立された民政当局は、旧来の日本の教育制度、特に師範教育の再開を認めませんでした。これにより、樺太青年師範学校はその機能を完全に喪失し、事実上の消滅に至りました。

法的な終結と関係者のその後

学校は教育活動を停止しましたが、日本の法令上はすぐには廃止されず、名目的な存在として残りました。学校関係者たちは、戦後の混乱と厳しい状況下で樺太からの引揚げを進めました。1947年（昭和22年）1月以降、校長以下、教職員や生徒たちは順次内地へと帰還し、各地の師範学校へと移籍することで、勉学や職務を継続しました。特に樺太青年師範学校の生徒の多くは、地理的な近さや学校種別から、北海道青年師範学校への転入を選びました。

そして、樺太青年師範学校が法的にその存在を終えたのは、戦後日本の教育制度が再編された1949年（昭和24年）5月31日のことです。この日、新制国立大学やそれに付随する師範学校などが設置される根拠となる国立学校設置法が公布・施行され、旧制の官立・公立高等教育機関が整理される中で、樺太青年師範学校も正式に廃止されました。このように、樺太青年師範学校は、戦時下のわずか数年間という短い期間ながら、青年学校教育を支える教員養成機関としてその役割を担い、激動の時代と共に姿を消しました。

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