橋田東聲

橋田 東聲（はしだ とうせい）: 日本の歌人と経済学者

橋田東聲は、1886年に高知県中村市に生まれた日本の短歌作家であり、経済学者です。本名は丑吾であり、彼は幼少期から詩の世界に魅了され、特に短歌に情熱を注ぎました。彼の学び舎である宿毛小学校高等科では、川島朝野、後の北見志保子と出会い、二人は生涯を通じての親しい関係を築きます。

東聲は中学校時代に短歌を作り始め、雑誌『青年』に作品を投稿しました。その後、第七高等学校に進学し、与謝野鉄幹から「東聲」の号を授けられます。東京帝国大学に進学し、最初は英文科に在籍しますが、後に経済学に転科し、無事に卒業しました。彼は大学在学中に短歌から離れ、小説や演劇に興味を抱くようになるものの、経済学の道を選びました。

大学卒業後、彼は東京日日新聞に入社し、経済学の知識を生かしましたが、病気のため早期退職を余儀なくされます。病床で斎藤茂吉の『赤光』を読み返し、短歌への情熱を再燃させました。その後、東京農業大学や横浜商業学校で教壇に立ち、経済学を講義しました。1917年、歌誌『珊瑚礁』を創刊し、北見志保子をはじめ、多くの同人と共に活動を広げます。

彼の短歌のスタイルは、時代の潮流を反映し、特に彼が参加した歌誌は多くの文学者を惹きつけました。しかし、1919年にスペイン風邪に罹患したことで、彼は『珊瑚礁』を閉じざるを得なくなり、その後に新たな歌誌『覇王樹』を創刊し主宰となります。

1921年、東聲は第一詩集『地懐』を出版し、詩作にさらに深みを増していきますが、同年、彼は北見志保子と離婚します。志保子は短歌の師匠でもあり、彼女との別れは東聲にとって大きな転機でした。離婚後は、名だたる歌人たちと交流を深め、また新たな歌誌『日光』の構想にも関与しますが、自らは『覇王樹』に注力しました。

1929年には明治大学の講師に就任し、さらに東京外国語学校教授に就任したのも束の間、彼は1930年12月に腸チフスにより急逝してしまいました。享年44歳で、彼の業績は短歌にとどまらず、多岐にわたりました。

彼の執筆は多彩で、短歌集だけでなく評論や翻訳も手掛けました。その中でも『新釈 正岡子規歌集』や『万葉集評釈』といった作品が知られています。短歌教師としての助言は数多くの若手歌人に影響を与え、文壇でも評価を受けていました。その業績は後世においても多くの文献で取り上げられ、彼の名は歌人として永続的に記憶されています。彼の詩的精神は、今日でも日本文学において光を放っています。

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