橘外男

橘 外男（たちばな そとお）について

橘外男は、1894年10月10日に石川県で生まれた日本の小説家です。彼の家族背景には、陸軍歩兵大佐である父、橘七三郎が含まれており、彼は金沢で生まれた後、熊本や高崎で育ちました。若い頃から小説に情熱を注ぎ、途中で旧制中学を数度に渡って退学となるなど、波乱万丈な青春時代を過ごしました。

外男は、15歳から小説に魅了され、さらなる成長を遂げるも、父との訣別やさまざまな問題を抱えることとなりました。叔父のもとで生活する中での不正行為から21歳で服役を経験し、その辛い経験は後の作品に影響を与えています。特に『私は前科者である』や『ある小説家の思い出』では、この出来事についての彼の思いが綴られています。

27歳になった外男は、妹の死を契機に小説『太陽の沈みゆく時』を発表し、その後、キリスト教の影響を受けた作品を数多く書きましたが、世に名を知られるようになったのは1936年に文藝春秋社から発表した『酒場ルーレット紛擾記』が入選したことがきっかけです。この頃、彼は独自の文体「饒舌体」を確立し、以降の作品に活かされています。

1938年には『ナリン殿下への回想』で直木賞を受賞し、その後も精力的に執筆を続けました。戦前に貿易会社や医療機器店で働いていたが、戦争の影響で情勢が厳しくなり、外男は満洲へと家族と共に移住します。ここでの彼の働きは、最初は書籍配給会社、次いで映画協会など多岐にわたりましたが、衛生状態の悪さに耐えられず帰国しました。

帰国後は、戦時中の新京での経験を元に「満洲物」と呼ばれる一連の小説を発表し、その独自の文体と悲惨な状況描写は高く評価されました。幅広いジャンルで活動しながら、ホラーや一種のSF物といった多様な作品を発表しました。のちの人生では、カストリ雑誌や少女誌などに寄稿し、文学界でその存在感を発揮しました。

彼の著書には、『艶魔地獄 一名或る死刑囚のグリンプス』や『泥寧』、『青白き裸女群像』などがあり、戦後や没後にも再刊されることが多く、今なお多くの読者に親しまれています。変遷する文学スタイルが彼の作品の魅力を高め、今日の文学界においても影響を与え続けています。

橘外男は1959年にこの世を去りましたが、彼の作品は未だに多くの読者に受け継がれ、研究され続けています。独自の視点と様々な経験を糧にした彼の作品群は、日本文学の中で重要な位置を占め続けているのです。

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