橘本神社

橘本神社

橘本神社は、和歌山県海南市に位置する神社で、菓子の神様として知られています。主祭神は、菓祖である田道間守と熊野坐大神です。特に菓子業界からの信仰が篤く、全国から参拝者が訪れます。また、ここはかつて熊野九十九王子の一つであった所坂王子の旧跡であり、歴史的な背景も持っています。

歴史

神社の創建時期は明確ではありませんが、その起源は古代に遡ると考えられています。

『記紀』によれば、垂仁天皇の命を受けた田道間守が、不老長寿の霊菓を求めて常世の国へ渡り、苦難の末に非時香菓（橘）を持ち帰ったとされています。しかし、帰国した時には天皇は既に崩御しており、田道間守はその悲しみに暮れ、天皇の陵墓に橘を捧げて自らも命を絶ったと伝えられています。この橘が日本で最初に移植された場所が、現在の橘本神社旧社地である「六本樹の丘」であると言われています。この橘は、現代のミカンの原種であり、この地がミカン発祥の地とも呼ばれる所以です。

現存する最古の記録としては、永享9年（1437年）の棟札があります。また、保元3年（1158年）には、白河法皇が熊野行幸の際に当社で一夜を過ごし、「橘の本に一夜のかりねして入佐の山の月を見るかな」という歌を詠んだと伝えられています。

江戸時代の貞享4年（1687年）には、紀州藩主徳川光貞が社殿の修繕を行った記録が残っていますが、その後、神社は荒廃し、明治初期には橘の老木と小さな祠が残るのみとなっていました。しかし、地元住民の尽力により再興され、明治40年（1907年）には、現在の場所である所坂王子跡地に社殿を再建し、所坂王子、搭下王子、橘本王子の三社を合祀しました。

祭事

橘本神社では、年間を通じて様々な祭事が行われます。

みかん祭 (10月10日)

この地域はミカンの産地として知られており、例祭は「みかん祭」と呼ばれています。祭神である田道間守が日本にミカンをもたらしたことにちなんだお祭りです。
全国銘菓奉献祭（菓子祭、4月第1日曜日）

古くはミカンが菓子として珍重されたことに由来し、菓子業界の繁栄を祈願するお祭りです。全国の菓子業者から様々なお菓子が奉納されます。

橘本神社は、豊かな自然に囲まれ、歴史と文化が息づく場所です。菓子の神様として、また熊野古道の歴史を伝える場所として、多くの人々に親しまれています。訪れる人々は、神社の静寂の中で、いにしえの歴史に思いを馳せ、心の安らぎを得ることができます。

関連情報

九十九王子 (海南市)
橘本神社 - 和歌山県神社庁

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