橘花 (航空機)

橘花（きっか）

概要

橘花は、第二次世界大戦末期に大日本帝国海軍によって開発された双発ジェット戦闘機であり、日本初の純国産ジェット機です。この機体は、主に海軍の空技廠がエンジンを開発し、中島飛行機が機体を設計・製造しました。試作型にはネ12B装備の「試製橘花」と、ネ20装備の「試製橘花改」という名称が付けられています。

開発の背景

1944年、日本は高高度を飛行できるレシプロエンジンの開発に行き詰まり、燃料の供給も困難になっていました。このため、海軍は簡素で高性能なジェットエンジンを装備した攻撃機の開発を決定しました。松村健一技師を中心に設計が開始され、初期の設計案には胴体上下のエンジン配置、胴体埋め込み型、主翼下懸架型がありました。最終的に、主翼下にエンジンを懸架する方式が選択されました。

日本は当時、ジェット戦闘機の開発において他国に比べて遅れをとっていましたが、徐々に技術を蓄え、エンジン開発を進めていきました。この過程でドイツからメッサーシュミット Me262の技術資料が入手され、開発に活かされることが期待されました。

機体の設計

橘花の外観はMe262に似ている部分もありますが、推力の低さから機体サイズは小型軽量化されており、翼形状もテーパー翼を採用しています。また、この戦闘機は掩体壕に隠せるように外翼部が折り畳める設計がなされました。

降着装置には攻撃機「銀河」と零戦の部品を流用し、開発コストを削減。一方で、ジュラルミンなどの素材不足を受け、代わりに鋼材などの安価な素材が多く使用されました。

初飛行とその後

1945年8月7日、橘花は試験飛行を行い、時速488km/hを記録しました。この初飛行は、日本初となるジェット機の空中飛行であり、非常に大きな意味を持ちます。しかし、その後の飛行では滑走路をオーバーランする事故も発生し、その修理中に終戦を迎えました。

量産の試み

終戦前には数十機が量産準備に入っていましたが、実際には完成に至った機体はわずかで、戦後にはアメリカに接収されることとなります。橘花は特攻専用としての使用が計画されていたが、実際には特攻機として使われることはありませんでした。

第七二四海軍航空隊

橘花を使用するための第七二四海軍航空隊が編成され、訓練も行われましたが、終戦に至るまで十分な準備を整えることができませんでした。特に、訓練開始から短期間で終戦を迎えることになり、その運用は大きく制約されました。

エンジンと技術

橘花には当初、ネ12Bエンジンが予定されていましたが、より高推力のネ20に変更されました。ネ20は、日本が開発した新しいターボジェットエンジンであり、非常に短期間での開発が実現しました。しかし、その寿命は短く、技術者たちの執念が感じられる結果となっています。

現存機と資料

現在、スミソニアン航空宇宙博物館で復元された橘花が展示されていますが、その由来についてはまだ判明していない部分も多いです。さらに、他にも現存するネ20エンジンがあり、いくつかがアメリカ国内で保管されています。どのようにしてこれらの遺物が現代に至ったのか、多くの歴史的背景が隠されています。

エンディング

橘花は、戦争という厳しい時代の中で生まれた日本の技術の結晶です。彼女の存在は、当時の航空技術や意義、そして航空戦の変革を象徴するものです。今なお多くの歴史的資源として見守られ、研究が続いています。

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