機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(以下、『0080』)は、1989年にリリースされたOVA作品です。全6話構成で、略称は「0080」や「ポケ戦」などと呼ばれています。シリーズ作品において、富野由悠季氏以外が監督を務めた最初の作品であり、OVA形式で発表された最初の作品という点でも歴史的な意義を持っています。
『機動警察パトレイバー』に続く低価格OVAとして企画され、1話あたり4800円という価格設定で販売されました。しかし、単なる低価格OVAに留まらず、1本の映画を6話に分割した構成を採用することで、従来のテレビアニメ的な手法とは一線を画しています。これは当時、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のレンタルが好調だったことから、より映画的な表現を追求した結果と言えるでしょう。その戦略は成功し、各巻6万本、DVD版を含めるとシリーズ全体で50万本もの売上を記録する大ヒットとなりました。
監督を務めたのは高山文彦氏です。『超時空要塞マクロス』での演出が高梨実氏(バンダイ・メディア事業部)に気に入られたことがきっかけで、本作の監督に抜擢されました。高山氏は電話を持たないほどの隠遁生活を送っていたため、スタッフが探し出すのに苦労したというエピソードも残っています。
ロボットアニメに対して「でかいブリキの箱に入ってパンチふるって何が楽しいんだろう」と疑問を抱いていた高山氏でしたが、本作ではMS(モビルスーツ)などのメカニック戦闘シーンを最小限に抑え、代わりに人間ドラマを重視した演出を行いました。メインキャラクターに関しては演出面での注文は少なかったものの、サブキャラクターについては、映画俳優の資料を美樹本晴彦氏(キャラクターデザイン)に提供し、イメージを共有することで、よりリアルなキャラクター造形を目指しました。
本作の大きな特徴として、主人公が非戦闘員の小学生である点が挙げられます。主人公アルフレッド・イズルハ(アル)役を演じた浪川大輔氏は、当時12歳とガンダムシリーズの主人公の中で最年少でした。現在も第一線で活躍する浪川氏ですが、本作出演後に声変わりしたため、後年のゲーム作品では比嘉久美子氏がアル役を演じています。ただし、浪川氏は後年のセルソフトCMで、成長したアルが当時を振り返るという設定で、何度かアル役を演じています。
従来のガンダムシリーズがニュータイプを主軸に物語を展開してきたのに対し、『0080』では普通の人々を主人公に、サイド6という中立地帯での局地戦を舞台に物語が展開されます。主役MSであるRX-78 NT-1アレックスの出番は少ないものの、アレックスが登場する第4巻と第6巻の販売実績が特に好調だったことから、次回作である『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』ではガンダムの出番を増やすという判断につながったという逸話も残っています。アレックスはニュータイプ専用に調整された機体という設定があり、アムロ・レイに渡される予定だったという設定も存在しますが、『機動戦士ガンダム』本編との直接的な繋がりは少ないです。
各話のサブタイトルや物語のプロットは、ヘミングウェイなどの戦争文学作品の影響が色濃く反映されています。主人公である民間人の少年が敵国の兵器に憧れ、パイロットと親交を深めるという展開は、映画『太陽の帝国』との類似点を指摘する声もあります。しかし、構成担当の結城恭介氏は、『太陽の帝国』を意識しつつも、主旨は異なるという発言をしています。また、映画『戦場の小さな天使たち』ともプロットが酷似しているとの指摘もあります。
タイトルの「0080」は一年戦争終結の日である宇宙世紀0080年1月1日に由来しますが、物語の大半は宇宙世紀0079年が舞台です。「ポケットの中の戦争」という副題は、レビル将軍がリボーコロニーでの出来事を「些細な一事に過ぎない」と評した言葉から取られたとされていますが、このレビルの発言は『0080』完結後に発行された書籍での記述が初出であり、『0080』発売時には存在していませんでした。
MSなどのデザインは出渕裕氏がリファインしており、当時のアニメ技術では表現しきれなかった部分を、よりリアルに描くことを目指しました。しかし、これらのリファインされたデザインは後に「統合整備計画によるバリエーション機体」という設定が追加され、デザイン上の変更ではなく別機体として扱われることになりました。
『0080』は、後年の作品にも影響を与えています。例えば、OVA作品『3×3 EYES』では、スタッフが『0080』を意識して、バーニィ役の辻谷耕史氏とクリス役の林原めぐみ氏を主人公とヒロインに起用したとのことです。
物語は一年戦争末期、地球連邦軍が開発した新型ガンダムを奪取しようと、ジオン公国軍の特殊部隊「サイクロプス隊」が北極の基地を襲撃するところから始まります。作戦は失敗し、新型ガンダムはサイド6のリボーコロニーへ送られます。リボーに住む少年アルは、偶然にもこの新型ガンダムとサイクロプス隊の活動に巻き込まれていくことになります。アルはサイクロプス隊のパイロット、バーニィと出会い、友情を育みますが、戦争の残酷な現実を突きつけられることになります。核攻撃の危機に瀕しながらも、アルは成長し、戦争の終結を迎え、様々な想いを抱きながら新たな一歩を踏み出します。
登場人物は、民間人のアル、サイクロプス隊のバーニィやシュタイナー、そしてアルの幼馴染みクリスなど、個性豊かなキャラクターが物語を彩ります。登場兵器も、モビルスーツやモビルアーマーなど、ガンダムシリーズお馴染みのメカニックが登場します。スタッフには、企画にサンライズ、原作に矢立肇氏と富野由悠季氏、脚本に山賀博之氏、デザインワークスに出渕裕氏など、そうそうたるメンバーが名を連ねています。音楽はかしぶち哲郎氏、主題歌は椎名恵氏と林原めぐみ氏が担当しました。
山賀博之氏は、自身の監督作品である『王立宇宙軍 オネアミスの翼』が『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の模倣的作品となってしまった反省から、「遊んでやろう」という気持ちで『0080』の脚本を引き受けたことを明かしており、遊びの気持ちで書いたため、クズであると自らを批判し、ガンダムの歴史を汚す悪い作品という評価をしています。
『0080』は、VHS、Betamax、LD、DVD、Blu-ray BOXなど、様々なメディアでリリースされ、テレビ放送も何度も行われています。小説や漫画、ゲームブック、画集など、関連メディアも多数展開されています。それぞれのメディアで、物語の解釈や表現が異なっており、多角的な視点から『0080』の世界を楽しむことができます。
『機動警察パトレイバー』に続く低価格OVAとして企画され、1話あたり4800円という価格設定で販売されました。しかし、単なる低価格OVAに留まらず、1本の映画を6話に分割した構成を採用することで、従来のテレビアニメ的な手法とは一線を画しています。これは当時、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のレンタルが好調だったことから、より映画的な表現を追求した結果と言えるでしょう。その戦略は成功し、各巻6万本、DVD版を含めるとシリーズ全体で50万本もの売上を記録する大ヒットとなりました。
監督を務めたのは高山文彦氏です。『超時空要塞マクロス』での演出が高梨実氏(バンダイ・メディア事業部)に気に入られたことがきっかけで、本作の監督に抜擢されました。高山氏は電話を持たないほどの隠遁生活を送っていたため、スタッフが探し出すのに苦労したというエピソードも残っています。
ロボットアニメに対して「でかいブリキの箱に入ってパンチふるって何が楽しいんだろう」と疑問を抱いていた高山氏でしたが、本作ではMS(モビルスーツ)などのメカニック戦闘シーンを最小限に抑え、代わりに人間ドラマを重視した演出を行いました。メインキャラクターに関しては演出面での注文は少なかったものの、サブキャラクターについては、映画俳優の資料を美樹本晴彦氏(キャラクターデザイン)に提供し、イメージを共有することで、よりリアルなキャラクター造形を目指しました。
本作の大きな特徴として、主人公が非戦闘員の小学生である点が挙げられます。主人公アルフレッド・イズルハ(アル)役を演じた浪川大輔氏は、当時12歳とガンダムシリーズの主人公の中で最年少でした。現在も第一線で活躍する浪川氏ですが、本作出演後に声変わりしたため、後年のゲーム作品では比嘉久美子氏がアル役を演じています。ただし、浪川氏は後年のセルソフトCMで、成長したアルが当時を振り返るという設定で、何度かアル役を演じています。
従来のガンダムシリーズがニュータイプを主軸に物語を展開してきたのに対し、『0080』では普通の人々を主人公に、サイド6という中立地帯での局地戦を舞台に物語が展開されます。主役MSであるRX-78 NT-1アレックスの出番は少ないものの、アレックスが登場する第4巻と第6巻の販売実績が特に好調だったことから、次回作である『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』ではガンダムの出番を増やすという判断につながったという逸話も残っています。アレックスはニュータイプ専用に調整された機体という設定があり、アムロ・レイに渡される予定だったという設定も存在しますが、『機動戦士ガンダム』本編との直接的な繋がりは少ないです。
各話のサブタイトルや物語のプロットは、ヘミングウェイなどの戦争文学作品の影響が色濃く反映されています。主人公である民間人の少年が敵国の兵器に憧れ、パイロットと親交を深めるという展開は、映画『太陽の帝国』との類似点を指摘する声もあります。しかし、構成担当の結城恭介氏は、『太陽の帝国』を意識しつつも、主旨は異なるという発言をしています。また、映画『戦場の小さな天使たち』ともプロットが酷似しているとの指摘もあります。
タイトルの「0080」は一年戦争終結の日である宇宙世紀0080年1月1日に由来しますが、物語の大半は宇宙世紀0079年が舞台です。「ポケットの中の戦争」という副題は、レビル将軍がリボーコロニーでの出来事を「些細な一事に過ぎない」と評した言葉から取られたとされていますが、このレビルの発言は『0080』完結後に発行された書籍での記述が初出であり、『0080』発売時には存在していませんでした。
MSなどのデザインは出渕裕氏がリファインしており、当時のアニメ技術では表現しきれなかった部分を、よりリアルに描くことを目指しました。しかし、これらのリファインされたデザインは後に「統合整備計画によるバリエーション機体」という設定が追加され、デザイン上の変更ではなく別機体として扱われることになりました。
『0080』は、後年の作品にも影響を与えています。例えば、OVA作品『3×3 EYES』では、スタッフが『0080』を意識して、バーニィ役の辻谷耕史氏とクリス役の林原めぐみ氏を主人公とヒロインに起用したとのことです。
物語は一年戦争末期、地球連邦軍が開発した新型ガンダムを奪取しようと、ジオン公国軍の特殊部隊「サイクロプス隊」が北極の基地を襲撃するところから始まります。作戦は失敗し、新型ガンダムはサイド6のリボーコロニーへ送られます。リボーに住む少年アルは、偶然にもこの新型ガンダムとサイクロプス隊の活動に巻き込まれていくことになります。アルはサイクロプス隊のパイロット、バーニィと出会い、友情を育みますが、戦争の残酷な現実を突きつけられることになります。核攻撃の危機に瀕しながらも、アルは成長し、戦争の終結を迎え、様々な想いを抱きながら新たな一歩を踏み出します。
登場人物は、民間人のアル、サイクロプス隊のバーニィやシュタイナー、そしてアルの幼馴染みクリスなど、個性豊かなキャラクターが物語を彩ります。登場兵器も、モビルスーツやモビルアーマーなど、ガンダムシリーズお馴染みのメカニックが登場します。スタッフには、企画にサンライズ、原作に矢立肇氏と富野由悠季氏、脚本に山賀博之氏、デザインワークスに出渕裕氏など、そうそうたるメンバーが名を連ねています。音楽はかしぶち哲郎氏、主題歌は椎名恵氏と林原めぐみ氏が担当しました。
山賀博之氏は、自身の監督作品である『王立宇宙軍 オネアミスの翼』が『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の模倣的作品となってしまった反省から、「遊んでやろう」という気持ちで『0080』の脚本を引き受けたことを明かしており、遊びの気持ちで書いたため、クズであると自らを批判し、ガンダムの歴史を汚す悪い作品という評価をしています。
『0080』は、VHS、Betamax、LD、DVD、Blu-ray BOXなど、様々なメディアでリリースされ、テレビ放送も何度も行われています。小説や漫画、ゲームブック、画集など、関連メディアも多数展開されています。それぞれのメディアで、物語の解釈や表現が異なっており、多角的な視点から『0080』の世界を楽しむことができます。
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