櫛田ふき

櫛田ふき（1899年2月17日 - 2001年2月5日）は、激動の20世紀を生き抜いた日本の女性運動家、民主運動家です。彼女は、東京外国語学校教授でドイツ語翻訳辞典を編纂した山口小太郎を父に持ち、恵まれた家庭環境で育ちました。日本女子大学を中退後、父の教え子であった櫛田民蔵と結婚しましたが、1930年代半ばに夫と死別。第二次世界大戦中は、一人で二人の子供を育てながら敗戦を迎えました。

戦後、櫛田ふきは壺井栄、壺井繁治、宮本百合子といった思想家や文化人との出会いをきっかけに、社会運動に深く関わるようになります。1946年3月16日には、宮本百合子や羽仁説子、加藤シヅエ、佐多稲子らとともに「婦人民主クラブ」の創立大会に参加。発起人の一人として名を連ね、書記長を経て、1949年には委員長に就任しました。また、同クラブの発足と同時に創刊された「婦人民主新聞」では編集長を務め、その活動を広く社会に伝えました。

1953年には、日本婦人団体連合会が結成され、国際民主婦人連盟の副会長に就任していた平塚らいてうが退任すると、櫛田ふきが後任としてその役目を引き継ぎました。1958年には、同連合会の3代目会長に就任し、女性の権利向上と平和運動に尽力しました。また、1950年には第2回参議院議員通常選挙に全国区から無所属で立候補しましたが、惜しくも落選しています。

1962年、櫛田ふきは新日本婦人の会の結成に初代代表委員として参加し、婦人民主クラブを退会しました。その後、亡くなるまで新日本婦人の会の代表委員を務め、女性運動の発展に貢献しました。国際民主婦人連盟の副会長としても活躍し、1976年には日本共産党全国女性後援会の代表委員として、後進の候補を支援し続けました。

櫛田ふきの活動は、子供の福祉にも向けられました。宮本百合子との出会いから、戦後の混乱期に生活のために仕立物や保険外交をしていた経験を生かし、母親の視点から社会問題に取り組みました。1955年に婦人民主クラブが初めて開いた日本母親大会では、議長団の一員として、母親たちの声を集めた「母親しんぶん」の編集に携わりました。また、子供たちの日常生活に目を向けた著述活動も行い、「ソ連の小学生と中国の幼児」や、子供と交通事故に関する記事を執筆しました。

「戦争と核兵器のない世界」を訴え、反戦運動にも積極的に参加しました。原水爆禁止世界大会の議長団に加わり、1970年代半ばにはベトナムを訪問して「ブーゲンビリア 花咲くハノイよ」を作詞するなど、平和への強い思いを表現しました。100歳を迎える1999年には、法案反対のデモに自ら参加し、生涯を通じて平和を訴え続けました。

櫛田ふきは、その生涯を通じて多くの著作を残しました。自らの足跡を綴った『たくさんの足音 そのなかの一つが歩いた道』や『二〇世紀をまるごと生きて』といった自伝的な作品をはじめ、『愛と希望の星みつめて』、『素敵に長生き』などのエッセイを執筆しました。また、共著や監修として『女性は解放されたか』や『われら母なれば 平和を祈る母たちの手記』など、社会問題や女性の権利に関する書籍にも携わりました。晩年まで精力的な活動を続け、102歳になる直前にその生涯を閉じましたが、その功績は今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

彼女の墓所は多磨霊園にあり、青山霊園の無名戦士の墓にも分骨されています。櫛田ふきの生涯は、女性の地位向上と平和を求める運動の歴史において、重要な一ページを刻んでいます。

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