羽仁説子

羽仁説子：教育評論家、社会運動家としての生涯

羽仁説子（はに せつこ、1903年4月2日 - 1987年7月10日）は、日本の教育評論家、社会運動家として知られています。彼女は羽仁吉一と羽仁もと子の娘として東京に生まれ、自由学園を卒業後、『婦人之友』の記者や自由学園の教授を務めました。後に森五郎（羽仁五郎）と結婚し、映画監督の羽仁進と羽仁協子の母となります。

社会運動への参加

羽仁説子は、戦後の日本において、女性の権利向上と社会変革のために積極的に活動しました。1945年11月には、加藤シヅエ、宮本百合子らと共に婦人団体結成を呼びかけ、「婦人民主クラブ」の設立に尽力しました。1952年には日本子どもを守る会の発足にも参加し、1958年から1988年まで第2代会長を務めました。彼女は中産階級的リベラリズムの立場から、女性運動、児童福祉、性教育などの分野で精力的に発言し、活動を展開しました。1960年には参議院千葉県補欠選挙に無所属で立候補しましたが、落選しました。

1962年、安保闘争に関わった女性たちによって「日本婦人会議」が設立されると、羽仁説子は議長の一人として名を連ねました。同年には、平塚らいてう、いわさきちひろらと共に「新日本婦人の会」の結成にも参加しました。これらの活動を通じて、彼女は社会における女性の地位向上と、より良い社会の実現を目指しました。

戦時中の言動

進歩的文化人として知られる羽仁説子ですが、戦時中には、「女性にとって協同生活への関心は天性のものである」「扶けることの喜びを無上の幸福とする心、それはわが子、わが夫のために犠牲となることの出来る心である」といった発言をしていました。また、「赫々たる皇軍の戦果が伝えられるたびに私ども女性は深く思いをめぐらして祖国の明日のために、大いなる国力を貯えねばならないという責任をひしひしと感じます」とも述べています。これらの発言は、戦後の彼女の活動とは対照的であり、批判の対象となりました。これらの発言について『進歩的文化人　学者先生戦前戦後言質集』では、「女性の犠牲心を説いた婦人評論家」という副題を付けています。

母との関係と自立

羽仁説子は、結婚前に肺を病む男性を慕っていましたが、母親である羽仁もと子の説得により、その関係を断念しました。この出来事は、彼女が母親の影響下から自立していく過程において、重要な転換点となりました。作家の森まゆみは、この失恋について「娘は母との激しい葛藤を経て自立していくが、説子にもそうした時期があったことを知って、筆者は納得と安堵を感じる。説子があの影響力の強い、カリスマである母もと子から別れ、自由学園という事業を継承せず、評論家として自立したことはそういう経緯があったからだろう」と述べています。

晩年と著書

羽仁説子は、1987年7月10日に亡くなり、雑司ヶ谷霊園に埋葬されました。彼女は生涯にわたり、教育、女性、児童福祉、性教育に関する多くの著書を執筆しました。これらの著書は、彼女の思想と社会活動の記録として、今日でも多くの人々に読まれています。

主な著書には、『新しき日のために』、『女性のたたかいに 現代女性はなにをなすべきか』、『シーボルトの娘たち』、『愛情と幸福とともに』、『性教育読本』、『女性のための政治論』、『青春をどう生きるか』などがあります。彼女の著作は、女性の自立、家庭教育、社会における女性の役割など、多岐にわたるテーマを扱い、広く社会に影響を与えました。

まとめ

羽仁説子は、教育評論家、社会運動家として、激動の時代を生き抜いた女性です。戦時中の言動は批判されることもありますが、戦後の社会運動への参加や数多くの著書を通じて、女性の地位向上や社会変革に貢献しました。彼女の生涯は、日本の現代史における女性の役割を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

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