櫛田宮

櫛田宮：神埼の歴史と文化を語る神社

佐賀県神埼市に位置する櫛田宮は、県社格を有する由緒ある神社です。福岡市に鎮座する有名な櫛田神社は、この櫛田宮から分祀されたと伝えられています。古くから神埼地域における信仰の中心地として、人々の生活に深く根付いてきました。

伝説と歴史

社伝によれば、櫛田宮の創建は景行天皇の時代まで遡ります。天皇の巡幸の際、当地に住む人々が疫病に苦しんでいることを知った天皇が、この地に社を建て、神を祀ったのが始まりとされています。それ以降、災厄がなくなったことから、この地は「神幸（かむさき）」と呼ばれるようになり、現在の神埼（かんざき）の地名の由来となったと伝えられています。

元寇の際にも、櫛田宮の霊剣が福岡の櫛田神社に運ばれ、祈祷が行われたとされています。その霊験により元軍が撤退したという伝説は、櫛田宮の威光を象徴するエピソードとして広く知られています。

神埼荘の鎮守として、櫛田宮は高志神社、白角折神社とともに「三所大明神」「三社宮」として崇敬を集めました。現在でも、毎年開催される「みゆき大祭」では、この三社に加え、櫛田宮境内に鎮座する櫛森・櫛丸両社の神輿が奉納され、盛大に行われています。

永久3年（1115年）、鳥羽天皇の勅願により社殿が造営されました。この際に勅使として派遣された本告道景と伴兼直は当地に移り住み、それぞれ本告氏、執行氏の祖となりました。両氏はその後、櫛田宮を含む三所大明神の宮司職を世襲することになります。

古文書には、平安時代後期以降、朝廷、幕府、そして地元領主による社殿の造修が度々行われていたことが記録されており、長きにわたり神埼一帯の総鎮守として、人々から厚い信仰を集めていたことが伺えます。江戸時代には長崎街道が整備され、神埼宿が櫛田宮周辺に設けられたことで、さらにその重要性が増しました。明治時代には郷社、その後県社に列せられました。

祭神と境内社

櫛田宮の祭神は「櫛田三神」として、須佐之男命、櫛稲田姫命、日本武命が祀られています。境内には、櫛森稲荷神社、櫛丸稲荷神社、祇園社、弁財天社、天満宮など複数の境内社が鎮座し、多様な神々が祀られています。

祭事

櫛田宮では、春祭（4月7日・8日）と秋祭（10月7日・8日）が主な祭事として行われています。特に、西暦が偶数の年に開催される「みゆき大祭」は、神幸祭や神楽奉納など、大規模な祭礼として知られています。

文化財

櫛田宮は、数多くの貴重な文化財を所有しています。佐賀県指定重要文化財である石造肥前鳥居は、慶長7年（1602年）に建立されたもので、その歴史的な価値は高く評価されています。また、御神幸祭絵馬や太神楽など、神埼の伝統文化を伝える貴重な資料も数多く残されています。

琴の楠

境内に立つ「琴の楠」は、景行天皇が巡行の際に埋めた琴が楠になったという伝説を持つ神木です。樹齢1000年と推定され、7回半回ると琴の音色が聞こえるといわれています。この楠を含め、境内には数本の古木があり、神埼の豊かな自然を感じることができます。

アクセス

櫛田宮へのアクセスは、JR長崎本線神埼駅から徒歩約10分です。神埼の歴史と文化に触れたい方は、ぜひ訪れてみてください。

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