櫟野寺

櫟野寺（らくやじ）

滋賀県甲賀市甲賀町櫟野に位置する櫟野寺は、天台宗に属する寺院であり、福生山自性院と号します。本尊は「櫟野観音」とも呼ばれる十一面観音菩薩で、その壮麗な姿は訪れる人々を魅了します。また、甲賀三大仏の一つである薬師如来像も安置されており、地域の人々から深く信仰されています。櫟野寺は、甲賀六大寺の一つとしても知られ、その歴史と文化的な価値は非常に高いと言えるでしょう。

歴史

櫟野寺の創建は、延暦11年（792年）にまで遡ります。伝承によれば、最澄が比叡山延暦寺根本中堂の用材を求めてこの地を訪れた際、十一面観音菩薩を安置したのが始まりとされています。その後、延暦21年（802年）には、征夷大将軍である坂上田村麻呂が蝦夷征討の際に、この寺の十一面観音に戦勝を祈願し、見事に蝦夷を平定することができました。この功績により、田村麻呂は櫟野寺を自らの祈願寺と定め、大同元年（806年）には七堂伽藍を建立しました。さらに、自ら毘沙門天像を彫刻し、家臣に相撲を奉納させたと言われています。

幾度かの火災に見舞われ、堂宇を焼失したこともありましたが、その都度再建されてきました。櫟野寺は、延暦寺の有力な末寺として、また甲賀六大寺の筆頭として、かつては広大な境内を有し、多くの子院を抱えていました。しかし、1968年（昭和43年）に旧本堂が焼失してしまいます。幸い、仏像などの重要な文化財は事前に収蔵庫に保管されていたため、無事でした。

境内

現在の境内には、本堂をはじめ、文化財を保管する宝物館（収蔵庫）、十三重石塔、庫裏、東門、土俵、鐘楼、仁王門などが建ち並びます。また、境内には十一面観音坐像石仏群も点在しており、静寂な空間の中で歴史を感じることができます。

本堂: 寺の中心となる建物。
宝物館（収蔵庫）: 貴重な文化財を保管する。
十三重石塔: 古代の信仰を示す石造の塔。
庫裏: 僧侶の生活空間。
東門: 境内への入り口。
土俵: かつて相撲が奉納されていたことを示す。
鐘楼: 時を告げる鐘が設置されている。
仁王門: 寺を守護する仁王像が安置されている。
十一面観音坐像石仏群: 境内に点在する石仏。

文化財

櫟野寺には、数多くの貴重な文化財が所蔵されています。特に、本尊である木造十一面観音坐像は、平安時代後期の作であり、像高312cmにも及ぶ巨像です。かつては33年に一度しか開扉されない秘仏でしたが、近年では春や秋などに特別公開されています。

重要文化財

木造十一面観音坐像（本尊）: 坐像としては日本最大の大きさを誇る。平安時代後期の作。
木造聖観音立像
木造薬師如来坐像: 甲賀三大仏の一つ。
木造毘沙門天立像
木造地蔵菩薩坐像
仏像6躯（一括指定）: 木造十一面観音立像、木造聖観音立像2躯、木造吉祥天立像2躯、木造地蔵菩薩立像
仏像9躯（一括指定）: 木造地蔵菩薩立像、木造聖観音立像5躯、木造十一面観音立像2躯、木造吉祥天立像

これらの仏像は、2016年から2017年にかけて、東京国立博物館で寺外初となる特別展示が行われ、大きな話題となりました。

滋賀県指定有形文化財

木造弥勒菩薩坐像
版本妙法蓮華経

甲賀市指定有形文化財

木造釈迦如来坐像
木造金剛力士像
鰐口
観音経

巡礼の地として

櫟野寺は、近江西国三十三箇所、甲賀西国三十三所、びわ湖百八霊場、湖国十一面観音菩薩霊場など、多くの巡礼路に組み込まれています。そのため、多くの巡礼者が訪れ、信仰の場としてだけでなく、歴史と文化に触れる場所としても重要です。

近江西国三十三箇所: 28番長福寺、29番櫟野寺、30番檜尾寺
甲賀西国三十三所: 1番櫟野寺、2番常光寺
びわ湖百八霊場: 84番檜尾寺、85番櫟野寺、86番龍福寺
湖国十一面観音菩薩霊場: 7番伊勢廻寺、8番櫟野寺、9番石馬寺

所在地・アクセス

所在地: 滋賀県甲賀市甲賀町櫟野1377
アクセス: JR草津線甲賀駅より甲賀市コミュニティバス（大原線）で約15分、「櫟野観音前」下車

関連項目

田村神社
十楽寺: 甲賀三大仏の一つである阿弥陀如来坐像がある。
* 大池寺: 甲賀三大仏の一つである釈迦如来坐像がある。


櫟野寺は、その豊かな歴史と文化財、そして美しい自然に囲まれた静寂な空間が魅力です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体験してみてください。

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