歌川国綱

歌川国綱（うたがわ くにつな、生没年不詳）は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師です。初代歌川豊国に師事し、その画技を磨きました。国綱の作画期は、文政年間（1818年～1830年）から万延年間（1860年～1861年）にかけてとされており、この期間に多くの作品を制作しました。

特に、合巻の挿絵を数多く手がけたことで知られています。合巻とは、江戸時代に流行した読本の一種で、絵と文章が組み合わされた物語形式の書籍です。国綱は、その挿絵を通じて、当時の風俗や人々の生活を描き出し、人気を博しました。

文政11年（1825年）に建立された「豊国先生瘞筆之碑」には、初代歌川豊国の門人として、国綱の名前が刻まれています。このことは、国綱が豊国の有力な門人であったことを示唆しており、彼の画業における豊国の影響の大きさを物語っています。

以下に、歌川国綱が挿絵を担当した主な作品を挙げます。

『御贄美少年始』：十返舎一九作の合巻で、弘化4年（1847年）から安政2年（1855年）にかけて刊行されました。国綱は、第八編（嘉永6年〈1853年〉）以降の挿絵を担当しました。
『侠客伝仦模略説』：楽亭西馬作の合巻で、嘉永3年（1850年）から安政4年（1857年）にかけて刊行されました。国綱は、第九編（嘉永6年）以降の挿絵を担当しました。
『全盛玉菊譚』：鈍亭魯文作の合巻で、安政5年（1858年）から万延2年（1861年）にかけて刊行されました。
『御狂言楽屋本説』第二編：三亭春馬作で、安政6年（1859年）に刊行されました。
『花摘籠五十三駅』：柳水亭種清作の合巻で、安政7年（1860年）に刊行されました。

これらの作品を通じて、国綱は、その繊細な筆致と色彩感覚を駆使し、物語の世界を生き生きと表現しました。特に、人物描写には定評があり、その表情や仕草を通じて、物語の登場人物たちの心情を巧みに表現しています。また、背景の描写にも力を入れており、物語の舞台となる風景や建物を緻密に描いています。

歌川国綱の作品は、江戸時代の浮世絵の歴史を語る上で、重要な位置を占めています。彼の作品は、当時の風俗や文化を今に伝える貴重な資料であるとともに、芸術的な価値も高く評価されています。

参考文献

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）大修館書店、1982年

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