歌川広重 (2代目)

二代目歌川広重：初代の遺志を継ぎ、新時代を切り開いた浮世絵師

二代目歌川広重（1826年 - 1869年）は、江戸時代末期から明治初期にかけて活躍した浮世絵師です。初代歌川広重の弟子であり、その作風を受け継ぎながらも、独自の画境を切り開きました。本名は鈴木鎮平、後に森田鎮平と改め、一幽斎、一立斎、立斎、立祥、喜斎などの号を持ちました。

生涯

二代目広重は、初代広重と同じく定火消同心の息子として生まれました。弘化の頃に初代広重に入門し、当初は重宣と名乗りました。美人画、花鳥画、武者絵などを描き、次第に風景画にも手を広げ、初代の作風に近づいていきました。また、当時流行した横浜絵も描いています。

1858年に初代広重が亡くなると、翌年、初代の養女お辰と結婚し、二代目広重を襲名しました。しかし、1865年にお辰と離婚し、その後は森田姓を名乗り、横浜に移り住んで喜斎立祥と号しました。この時期、海外輸出用の茶箱に貼るラベル絵を多く制作し、「茶箱広重」として外国人にも親しまれました。

作品の特徴

二代目広重の作品は、初代広重の画風を忠実に継承しながらも、独自の視点や表現を取り入れている点が特徴です。特に風景画では、大胆な構図や鮮やかな色彩を用いて、当時の都市や名所の様子を生き生きと描き出しています。

例えば、安政6年（1859年）に描かれた「諸国名所百景　尾州名古屋真影」では、月夜に浮かび上がる名古屋城の金鯱を大胆にクローズアップしています。また、初代広重の晩年の作である「名所江戸百景」にも参加しており、「赤坂桐畑雨中夕けい」など、いくつかの作品を制作しています。これらの作品には「二世広重画」と署名されています。その他、「立祥」の落款を用いた横浜絵や開化絵も残されています。

肉筆画では、「遊君図」が知られています。この作品は、師である初代広重の様式を受け継ぎながら、温和な人柄が表れた美人画です。

代表作

二代目広重の主な作品には以下のようなものがあります。

錦絵
「末広五十三次」シリーズ
「三十六花撰」
「名所江戸百景」
「諸国名所百景」
「横浜岩亀見込之図」
「隅田川八景」
「東都三十六景」
「東都名所」
「東京名所三十六花撰」
肉筆画
「大磯の虎御前と馬上の十郎図」
「不二遠望図」
「遊君図」
「秋草に美人図」
「夜桜図」
「日光の滝図」
「待乳山雪景図」
「二嬌納涼図」

後世への影響

二代目広重は、44歳という若さで亡くなりましたが、その画業は後の浮世絵師たちに大きな影響を与えました。特に、四代目歌川広重こと菊池貴一郎は、二代目広重から絵を学んだとされています。二代目広重は、初代の作風を継承しながらも、時代に合わせて新たな表現を追求し、浮世絵の世界に新たな風を吹き込んだ重要な存在です。

参考文献

小島烏水 『浮世絵と風景画』 前川文栄閣、1914年
藤懸静也　『増訂浮世絵』　雄山閣、1946年
鈴木重三 『広重』 日本経済新聞社、1970年
日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年
吉田漱　『浮世絵の見方事典』　北辰堂、1987年
稲垣進一編　『図説浮世絵入門』〈『ふくろうの本』〉　河出書房新社、1990年
小林忠編　『肉筆浮世絵大観（3） 出光美術館』　講談社、1996年
小林忠編　『肉筆浮世絵大観（8） ニューオータニ美術館』　講談社、1995年
小林忠監修 『浮世絵師列伝』 平凡社<別冊太陽>、2006年
奥田敦子編　『広重　初代～五代広重のガイドブック』　太田記念美術館、2007年

関連項目

歌川広重
歌川広重 (3代目)
歌川広重 (4代目)
歌川広重 (5代目)

外部リンク

二代目 歌川広重 - Google Arts & Culture
* 歌川 広重 2代 | 錦絵でたのしむ江戸の名所｜国立国会図書館

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