歌川芳宗

歌川芳宗（1817年 - 1880年）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した浮世絵師です。歌川国芳の門人であり、本姓は鹿島、名は松五郎といいました。一松斎と号し、江戸銀座二丁目に住んでいました。

19歳で国芳に入門し、武者絵、時局絵、役者絵、美人画など幅広いジャンルを手がけました。特に彩色に優れ、師である国芳の多くの作品の彩色を担当したと伝えられています。浅草寺に奉納された国芳筆の絵馬「一ツ家図」の裏には芳宗の名が記されています。

芳宗は、その飄々とした性格から、しばしば師である国芳の怒りを買い、十数回にわたって破門されたといわれています。しかし、その都度、国芳のもとに戻り、師弟関係は晩年まで続きました。晩年には、娘のしま女が芸者として成功したことで、新橋の金春街道に芸者置屋を構え、裕福な生活を送ったとされています。しかし、不運にも井戸に落ちて亡くなり、享年64歳でした。墓所は豊島区西巣鴨の良感寺にあり、法名は雲上院興与芳宗居士です。

芳宗は多くの門弟を育て、宗政、宗久、宗成、宗兼、宗正などが知られています。また、家庭では11人の子に恵まれ、末子の周次郎は月岡芳年に入門し、新井年雪と名乗りました。

主な作品には、以下のものがあります。

『敵鰹差身之業物』：合巻。歌川芳虎、歌川芳升と共同で挿絵を担当。
「十二荘菖蒲の図」：大判錦絵3枚続。
「東海道之内　江戸　尾張丁」：大判錦絵揃物。
「東海道　本芝　札ノ辻」：大判錦絵揃物。
「東海道　洛中　三條ノ大橋」：大判錦絵揃物。
「室町御所御能興行之図」：大判錦絵3枚続。
「江戸名所尾張町之図」:大判錦絵3枚続。
「三社祭礼善玉おどり」：大判錦絵。
「江之島弁財天　開帳群集之図」：大判錦絵3枚続。
「鞍馬山大僧正と牛若丸の図」：絵馬。
「夏姿美人図」:絹本着色、太田記念美術館所蔵。
「双美人図」:絹本着色、太田記念美術館所蔵。

これらの作品は、芳宗の優れた描写力と彩色技術を示しています。特に、美人画における繊細な筆致と、鮮やかな色彩感覚は高く評価されています。

芳宗は、その破天荒な性格と才能から、多くの逸話を残しており、現代においても、彼の作品は浮世絵ファンから愛され続けています。

参考文献としては、『原色浮世絵大百科事典』、『肉筆浮世絵名品展』、『歌川国芳とその一門展』などが挙げられます。

関連人物としては、師である歌川国芳、息子の新井年雪、そして門弟たちがいます。

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