歌川芳延

歌川芳延（うたがわ よしのぶ）は、天保9年（1838年）に生まれ、明治23年（1890年）に没した、幕末から明治時代にかけての浮世絵師です。本名は松本八郎といい、幼少時に士族の松本氏の養子となっています。

師事と画風

芳延は、 ابتداは歌川広重に浮世絵を学びましたが、その画風に窮屈さを感じ、後に歌川国芳の門下に入りました。国芳に入門した時期については18歳の時とも、壮年時とも言われており、国芳の描いた狸の絵に感銘を受けたことがきっかけだったと伝えられています。作画期は安政年間（1854年 - 1860年）から明治10年代頃までです。

狸との縁

芳延は、特に狸の絵を得意としており、「狸の芳延」という異名を持ちました。財産を失い、義兄の吉田屋宇三郎に身を寄せていた頃には、2世絵馬屋と交流し、狂歌も学びました。浅草田甫で狸汁の店を開いたことから、「田甫の狸」とも呼ばれていたそうです。

晩年と作品

その後、芳延は横浜に移住し、一時浮世絵から離れました。その後名古屋に移り、武者絵や浮世絵風俗画を得意として描きました。陶器に錦絵風の絵付けを施したのも芳延が最初であると言われています。狸の絵を得意としたことから財を成し、再び東京へ戻りました。また、肉筆浮世絵の幽霊画なども手がけています。

53歳で亡くなり、墓所は足立区南花畑の長建寺にあります。法名は松還院本誉芳延居士。

代表的な作品

「海坊主」 紙本着色 - 全生庵コレクション
「武者絵」 絵馬 - 妙法寺所蔵
「鐘馗図」絹本墨画着色 まくり1枚 - ボストン美術館所蔵

参考文献

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』 第2巻 大修館書店、1982年

歌川芳延は、広重と国芳という二人の巨匠から影響を受けつつ、独自の画風を確立した浮世絵師です。特に狸の絵は、彼の代名詞とも言えるでしょう。また、狂歌や狸汁の店など、多才な一面も持ち合わせていました。彼の作品は、現在も美術館などで鑑賞することができます。

もう一度検索