正木川

正木川の詳細解説

正木川は、岐阜県岐阜市を流れる木曽川水系の一級河川であり、伊自良川の支流として、最終的には伊勢湾へと注ぎます。その全長は約4.8km、流域面積は1.5km²と、比較的規模の小さい河川ですが、地域にとっては重要な存在です。

流路と地理的特徴

正木川の源流は岐阜市長良にあり、そこから西へと流れ、岐阜市正木南で伊自良川に合流します。流域は主に住宅地と市街地で、一部区間は暗渠となっています。源流付近は不明瞭で、岐阜グランドホテルの放流水が主な水源とされています。下流部では、鷺山本通り沿いを流れ、マーサ21の南側を通過し、排水機場を経て伊自良川に合流します。

歴史的背景

正木川の歴史は、長良川の流路変遷と深く関わっています。かつてこの地域には、長良川の分派川の一つである「長良古川」が流れていました。1534年の大洪水で長良川の流路が大きく変化し、「長良古川」は本流へと吸収されました。その後、1614年の洪水で、新たな流路として「長良古々川」（現在の正木川の前身）が形成されます。

長良古々川は、戦国時代の鷺山城の城濠に水を引き込むために作られた水路が起源という説もあります。一時、長良川の本流として機能しましたが、徐々に水量が減少し、洪水時のみに水が流れるようになりました。1930年代に行われた長良川の改修工事により、長良古川と長良古々川の分派口が締め切られ、現在の正木川の形となりました。

流域の変化と都市化

長良川の改修工事後、旧河川敷は宅地として利用されるようになりました。第二次世界大戦後には、戦災からの復興と住宅不足を解消するため、この地域に住宅が建設されました。これにより、かつての河川敷は住宅地へと姿を変え、現在の街並みが形成されました。

また、1953年にはこの地域に工場が建設され、その後、大型商業施設マーサ21が開業しました。このように、正木川周辺は、歴史的な変遷とともに、都市化が進んだ地域でもあります。

防災対策

1976年の豪雨災害では、長良川と伊自良川の水位上昇により、正木川流域で広範囲の浸水被害が発生しました。この災害を機に、1980年には正木川排水機場が設置され、内水排除機能が強化されました。現在では、水位計が設置され、リアルタイムで水位情報が公開されています。

現在の姿

正木川は、その歴史的背景と都市化の影響を受けつつ、現在も地域住民の生活と密接に関わる河川です。排水機場による防災機能の強化、水位情報の公開など、安全な地域づくりに重要な役割を果たしています。

正木川は、過去の洪水被害の教訓を活かし、水害に強い街づくりを目指す地域の象徴とも言えるでしょう。


参考資料:
岐阜県「河川調書（令和3年4月1日現在）」
岐阜県「木曽川水系正木川 洪水浸水想定区域図（想定最大規模）」
『長良川流域における総合的な治水対策プラン 改定版』岐阜県、2014年3月
大野勇『長良川北治水略記：附・長良川北水害豫防組合誌』長良川北水害豫防組合、1937年12月3日
鷺山史誌編集委員会『岐阜市鷺山史誌』鷺山校下自治会連合会、1989年1月1日
平凡社地方資料センター『岐阜県の地名』 21巻、平凡社〈日本歴史地名大系〉、1989年7月14日
* 「ふるさとの歴史こぼれ話 Vol.5 水害を防ぎ、新しい町を創る －長良古川・古々川の締め切りと岐阜特殊堤防－」『VIVO』2012年冬号〔第28号〕、岐阜ルネッサンスクラブ、2012年1月26日

もう一度検索