武徳 (明)

武徳（生没年不詳）は、元末から明初の時代に活躍した軍人です。本貫は寿州安豊県とされています。

元末の動乱期から明朝への帰順

元の至正年間、武徳は義兵の千戸として頭角を現しました。当時、元王朝の衰退をいち早く察知し、将軍の張鑑（張明鑑）に対し、速やかに新たな主君を選ぶよう進言しました。張鑑はこの進言を受け入れ、武徳と共に朱元璋に帰順しました。この決断は、後の武徳の活躍を大きく左右することになります。

李文忠との連携と数々の武功

朱元璋の傘下に入った武徳は、李文忠に従い各地の戦いに参加しました。池州の戦いでは、流れ矢が右股を貫通する重傷を負いながらも、平然と戦闘を続けたといいます。この勇猛さは、武徳の不屈の精神を示すエピソードとして語り継がれています。その後も、於潜、昌化の攻略や厳州の攻略戦など、数々の戦いで先陣を切って戦い、その功績から万戸に昇進しました。

苗族の将軍、楊完者が烏龍嶺に進軍した際には、武徳は李文忠に奇襲を献策し、見事楊完者の陣営を打ち破りました。蘭渓の奪取、諸曁の攻略、紹興への進撃など、各地の戦いで武徳は常に先頭に立ち、右腕を負傷しても決して退きませんでした。李文忠は、武徳の奮戦ぶりを見て、「将兵が皆このようであれば、負けることなどあろうか」と感嘆したと伝えられています。

反乱鎮圧と各地の守備

1362年（至正22年）、蔣英と賀仁徳が反乱を起こすと、武徳は李文忠に従って金華を平定し、さらに処州へ進撃しました。劉山で賀仁徳と遭遇した際には、右股に戈を受けるも、刀で戈を斬り払い、追撃しました。賀仁徳は再戦でも敗北し、部下に殺害されました。武徳は凱旋後、厳州の守備を任されました。

2年後、官制が定められると、武徳は管軍百戸に任命されました。その後も李文忠に従い、張士誠の軍を諸曁で破り、浦城の救援にも駆けつけ、各地の山寨を攻略しました。さらに、李文忠と共に建寧、延平、汀州を攻略し、福建の山間部の諸寨を全て平定しました。これらの功績により、管軍千戸に昇進し、衢州に移駐して守備を担当しました。この地で武徳は世襲を許されました。

晩年と雲南遠征

その後、武徳は呉禎に従って海上を巡視し、呉禎の推挙により平陽の守備を命じられました。8年間その任を務め、退役しました。しかし、1381年（洪武14年）に雲南遠征が始まると、宿将としての経験を買われ、遠征に随行することを命じられました。

武徳は、その生涯を通じて数々の戦いで武功を挙げ、明朝の成立と発展に大きく貢献しました。彼の勇敢さと戦略眼は、後世に語り継がれるべきものです。

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