呉禎

呉禎（ご てい）は、元末から明初の時代に活躍した軍人です。彼は初め国宝という名前でしたが、後に禎の名を賜りました。定遠（現在の安徽省定遠県）の出身で、兄の呉良と共に朱元璋に仕え、明王朝の建国に大きく貢献しました。

生涯

至正13年（1353年）、呉禎は定遠攻略に参加した24将の一人として、その名を歴史に刻み始めました。滁州や和州の攻略にも参加し、集慶の陥落にも貢献しました。さらに、鎮江、広徳、常州、宣城、江陰などでの戦いでも目覚ましい活躍を見せ、常遇春の指揮下で銅陵と池州を攻略しました。その功績が認められ、天興翼副元帥に任命され、1千の兵を率いて兄の呉良が守る江陰に駐屯することになりました。

江陰では、呉禎は巧みな指揮で守りを固め、張士誠軍の度重なる攻撃を退けました。張士誠の将である蘇同が江陰に攻め込んできた際には、呉禎は北門から出撃し、王子明が南門から出撃するという挟み撃ち戦術で敵を打ち破りました。この功績により、英武衛親軍指揮使に任じられ、その後、徐達の指揮下で湖州を平定しました。さらに大都督府事に昇進し、平江の鎮撫に当たることになりました。

至正27年（1367年）10月には、湯和の指揮下で方国珍軍を攻撃しました。呉禎は得意の舟戦術を駆使し、方国珍軍に奇襲を仕掛けました。この奇襲により、方国珍軍は混乱し、海上へと逃亡しました。呉禎はこれを追撃し、逃げ場を失った方国珍は降伏しました。その後、呉禎は海路から福州を攻撃し、洪武元年（1368年）には延平を攻め、陳友定を捕らえました。これらの功績により、左相兼金大都督府事に任じられました。

洪武3年（1370年）には、沂州の山賊を討伐し、靖海将軍に任じられて海上防衛を担当しました。同年、靖海侯に封じられ、1千5百石の食禄を与えられました。また、仇成が遼陽を守ることになった際には、呉禎は数万の水軍を率いて、山東や登州からの物資を遼陽に輸送しました。呉禎率いる水軍によって海路の安全が確保されたため、遼陽地域は物資不足に陥ることなく、遼河の東部を攻略することもできました。

洪武7年（1376年）、倭寇が侵攻してきたという知らせを受けた呉禎は、水軍を率いて倭寇と戦いました。彼は琉球近くまで倭寇を追いかけ、捕獲に成功しました。この勝利以降、呉禎の在任中に倭寇が侵攻することはなかったとされています。

洪武11年（1378年）、呉禎は遼東へ出征しましたが、病に倒れ南京へ帰還しました。翌洪武12年（1379年）に亡くなると、海国公に封じられ、襄毅と諡されました。呉良と共に功臣廟に肖像が奉られましたが、洪武23年（1390年）には胡惟庸の獄に連座し、爵位を剥奪されました。

関連事項

呉禎の墓は、兄の呉良と共に、明・清王朝の皇帝墓群の一部として世界遺産に登録されています。

参考文献

『明史』巻131 列伝第20

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